マンション管理士の独り言・・・597

「駐車区画の決め方」

分譲マンション購入時には、「管理に関する承認書」へ署名捺印を求められます。
これは売主とか管理会社が今までの経験とかノウハウによって作成した管理規約原案というのを購入者に“この内容でいいですよ”“この管理規約でOKですよ”と承認をいただくものです。
このようにして購入者全員の承認を得られれば、晴れて管理規約原案は管理規約として発効することとなります。

この管理規約原案も前々からつぶやいているように私的自治の原則(契約自由の原則)によって作成されていますので、各社それぞれで内容は異なります。
以前は購入者の勉強不足や情報不足に付け込んでこの原案に“悪さ”をしている売主もいましたが、最近はあまり見かけなくなりました。

そんな中、最近の管理に関する承認書では「売主が当初決めた駐車区画の利用者については管理組合発足後もこれを承継すること」という一文を入れる売主さんが増えています。売主が決めた駐車区画利用者を管理組合発足後にデリートして再度抽選し直す、なんてやってると混乱を招きますので合理性のある規定だと思います。
ではどのように売主が駐車区画利用者を決めているかと言うと、まずは、先着順。
「駐車区画は先着順ですから、早めに住戸を申し込めばそれだけ良い区画が確保できますよ」って購入をあおることが出来ます。
続いては抽選。
入居説明会の折にでも、抽選を行って区画を決定していきます。
初めに抽選する順番を抽選し、その後順番に従って希望の駐車区画を決めていきます。
つぶやき主が販売センター長だった時は、もうひと工夫して、入居説明会で駐車区画決定順番だけを抽選し、内覧会の折に実際の駐車区画を見てもらって区画を決定してもらっていました。
図面だけで駐車区画を選ぶと、竣工後実際の駐車区画では、“桜の木の下で落ち葉が多く樹液が垂れるとか”“一方通行とは気付かなかった”とかの苦情が寄せられる場合があります。しかし、これらは公平な抽選の結果ですから、そんな大きなクレームにもならず、管理組合もその駐車区画利用者を承継します。

ところが決め方にオカシイところがあると管理組合はお荷物を背負わされちゃうこととなります。
よくあるのが、最上階の大きく高額な部屋には、初めから2台分の駐車区画や屋内駐車区画を割り当てていたりします。また、“屋内駐車場が確保できなきゃ、マンション買わない”って我が儘なお客さんには屋内駐車場を割り当てたりします。
抽選であっても、我が儘なお客さんが屋内駐車場を確保できるようにするなんてわけない話です。
また、入居説明時に全戸完売できていなければ、今から売っていく住戸を売り易くするために良い駐車区画を確保しておくなんてこともやっています。

しかし、あまりに公平性を欠く駐車区画決め方法の場合は、管理組合発足後にトラブルとなります。
“何で、最上階の人は屋内駐車場に2台も停めてるの?”“ウチは敷地内に駐車場を確保できなかったのに2台確保してる人がいるじゃん。”“住戸を売ったり貸したりした場合、次の買主や借主が今までの駐車区画を引き継ぎ出来るとなってるじゃん。じゃあ、ウチはずっと機械式駐車場なの?”

それなら、公平性を確保しようとして「住戸を売ったり貸したりする場合は、一旦管理組合に返却して、その後抽選によって使用者を決定する」としようとしても、それじゃ住戸を売ったり貸したりする時に、売りにくくなる、貸しにくくなる、なんて声が必ず上がってきます。悪くすると住民間でいがみ合いになったりします。

駐車場区画利用者決めはとてもデリケートな事柄です。売主さんは早期に完売しなきゃならないのはわかりますが、当初に公平性を欠く区画利用者決めをされると、管理組合さんがその後大変だということを考えて決めてほしいものです。