マンション管理士の独り言・・・623

「うちが悪いわけじゃ・・・」

共用部の2年点検のご依頼が入ります。
給排水管や雨水管にファイバースコープ入れて内視検査したり、屋上防水・外壁・階段・開放廊下などの調査をします。
打診棒でタイルを叩いて剥離状況なども調査します。
最近は早ければ半年で漏水するマンションがあったりします(どこなのかは教えてあげな~い)ので、専門家に依頼する管理組合さんも増えてきました。

報告書を理事会へ提出しますが、手直しを含めてあまりにヒドイ状態だと売主の担当者を理事会へ呼びつけて「ど~なってんの?キチンと補修してよ」です。
ところが当の呼びつけられた担当者はあまり悪びれた様子はありません。
口では「申し訳ありません。すぐに手配します。」と言いますが、どこか他人事のような感じです。
売主の担当者からすれば、「建築したゼネコンの不手際なのに、なんで自分が矢面に立たなきゃなんないの?」です。
更には「設計監理した建築事務所は何やってたんだ。しっかりした現場監理やったのか?」とも考えます。

管理組合さんからすれば、このマンションは売主さんから購入したので、法律的には売主と買主との関係が生じていますので、売主さんに言います。
というか、売主さんにしか言いようがありません。
管理組合さんとこのマンションを建てたゼネコンさんや設計した建築士さんとは直接的な法律関係はありません。
ゼネコンさんにこのマンションの建築工事を発注したのは売主さんです。
設計監理にしたって、発注したのは売主さんです。
ゼネコンさんや設計した建築士は売主さんから受注したのです。

管理組合からすれば、本当は「こんな精度の悪い仕上げをしやがって、しっかりした工事をしろ!」或いは「工事中の監理はど~なってたんだ」とそれぞれゼネコンさんや設計建築士さんに言いたいのですが、そうもいかず、売主の担当者が窓口になってしまいます。
売主の担当者も「うちが建てたわけじゃない。下手くそなゼネコンのせいだ」なんて思っていますからどこか他人事のような雰囲気です。

ベネッセで個人情報の漏えい事件がありました。
記者会見に臨んだ社長さんに記者から「おたくは被害者ですか?加害者ですか?」と問いかけられました。
「うちは加害者です」と断言し頭を深々と下げていましたが、見ていた“ひねくれ者”つぶやき主は「加害者と言いながら、半分くらいは自分とこだって被害者なんだぞって思っているに違いない」と決めつけていました。

“売主が悪い”“いやうちじゃない建てたゼネコンが悪い”“設計士がキチンと現場管理をしてないからだ”なんて責任逃れの犯人探しは横に置いといて、「しっかりした補修工事を当事者意識を持って実施してね」です。
管理組合がトバッチリを喰うのだけは勘弁願いたいものです。