マンション管理士の独り言・・・654

「騒音問題」

分譲マンションと言うのは一つの大きな建物を小さく区切って(分譲して)集合住宅としたもので、当然ながら上下左右を他の住戸に囲まれています。
上下左右にそれぞれ異なる家族構成の他人が住んでいますので、隣戸からの騒音は必ず発生します。
騒音を受け取る方の“感じ方”によっても異なりますが、無音ではありません。
社会で生きていく以上“無音”はあり得ないわけで、かと言って誰もが喧しいと感じる環境ではストレスが溜まりますし、発病してしまう方もいます。
いわゆる受忍限度っていうやつが基準となります。
社会通念上、これくらいなら我慢すべきだよ、ってことです。
受忍限度については詳しく呟きませんが、北九州のマンション事情をつぶやきます。

市内マンションのほとんどは階下への遮音性能をLL45、LH50を基準に造られています。
売主さんの商品基準に従って設計士もそのように設計し、施工会社もそのように造ります。LLと言うのはラウドネスライトで軽量衝撃音といい、ビー玉を落とした時に発せられるような軽い音です。
LHというのはラウドネスへヴィーで重量衝撃音といい子供さんが飛び降りるときに発せられる重い音です。
45と50では数字の小さな方が遮音性能が優れています。
客観的には上階のスリッパの音は聞こえないが、サンダルの音は聞こえるって程度です。要するに聞こえるってことです。
“分譲マンションだから上階からの音は聞こえない”なんて思ってマンションを購入しちゃいけません。

また、上階からの音を遮るには床コンクリートスラブの厚みを増せばいいのですが、市内マンションのは床の工法は床コンクリートスラブの厚みが在来工法で200mm、ボイドスラブならば250~275mmで、その上に防振ゴム付きスタッドという受け金物、そしてベースパネル、12mmのフロアー材という置床仕上げです。
さらに、固体伝播音を削減するために壁と床を隔絶させその隙間を幅木で処理するというシステム床も採用しています。
残念ながら福岡のマンションでは床コンクリート厚は230mmくらいが標準なので北九州マンションはその分遮音性能が劣っていると思われます。
建築費単価も比較すれば北九州マンションは安価になっています。

営業マンは「分譲マンションですから遮音性能はイイですよ」何て言いますが、これに対しては「そんな主観的ではなく、客観的に数字で示してよ。L値はいくらで設計しているの?」って聞きましょう。
そして竣工時に環境測定を実施してもらいましょう。
環境測定と言うのは遮音性能が当初の設計通りとなっているかどうかを空室の状態で測定するものです。
環境測定の結果、もし設計基準通りの遮音性能が確保されていなかったら、確保できるまで補修してもらわなきゃ、です。
確保されていて、それでも上階からの騒音が気になったとしても、それはそういう遮音性能のマンションを購入した自分の責任だよ、ってことです。
ジョイフルに行って、ロイヤルホスト並みのサービスを受けられるわけありません。

上階からの騒音トラブルが持ち込まれます。
そして、“上階の人が深夜に走り回って常識がない”反対に“下階の方は病的に音に敏感すぎる”って住んでいる方の問題に矮小化されます。
ほんとにそうなの?です。
販売時にパンフレットに記載されていたL値が確保されているのか、或いは営業マンがトークしたL値が確保されてなかったら、販売時に謳った商品性能が確保されていなかった、ということで売主の責任でしょ、って思います。
これだけの商品性能がありますよって言って売っておきながら、それが確保されてないなら責任とってよ、です。

騒音問題について入居者同士の問題にされてしまう風潮がありますが、売主が当初約束した遮音性能があるの?って感じています。
環境調査さえしてないんじゃないの?