マンション管理士の独り言・・・665

「充実した共用部にゴマかされちゃダメだって」

新築マンションを購入するときは、設備仕様・価格・デザイン・遮音性・立地・利便性・環境・売主の信用性などなんていうので選ぶのでしょうが、これは正解。
でも不十分です。これだけの項目でマンションを購入するのは短慮です。
これらに加えて「将来トラブルになる種のなるべく少ないマンション」を選ばなきゃです。

民法の格言で「共有は紛争の母」なんていうのがあります。
しかしマンションでは皆で共有し維持管理を行わなければならない共用部分があるのでトラブルの種は必ず内在しています。
このためマンションでは何より合意形成が必要です。
その過程で意見の対立があったり、それが高じてトラブルになっちゃうことはある意味自然で仕方ないのですが、売主さんの余計な設備によってマンション居住者がいがみ合うことはご遠慮したいものです。

そもそも売主さんとマンションを購入しようとする人との立ち位置が異なります。
売主さんはとにかく早期に完売を目指しますので、そのためには見栄えのいい、他のマンションにはない、こんなマンションライフがしてみたいな、って購入者の夢が膨らむような設備を設置する傾向にあります。
売ってしまえば、管理は管理組合が行うので、その後のことまで考える必要はありません。購入者もこんな設備があればいいなと夢膨らませて住み始めるのですが、多くの場合こんな施設設備はその利用に際してルール作成が難しいし、維持管理にお金もかかります。

典型的な例がチャイルドルーム。“小さいお子さんをお持ちのご家庭のコミュニケーションつくりに役立ちます。”なんてふれ込みでしょうが、やがてお子さんだけで使用するようになり、その後小学生高学年がそのマンションに居住していない友達を連れてくるようになり、ランドセルはほったらかしで、テレビゲームに熱中するようになります。
しかもその部屋のコンセントを勝手に使って充電です。
“親の顔が見たい”なんてクレームが管理組合に寄せられるようになります。
年月とともに小さいお子さんがいなくなり、やがてそのチャイルドルームは誰も使う人がいなくなって、閑散とします。

懇意にしている管理会社フロントマンは、チャイルドルームはもちろん不要だし、滑り台なども余計な設備だと話していました。
滑り台なんて使うのは入居後ほんのちょっとの期間だけで、もし滑り台のメンテナンスが悪くて怪我でもされたら管理組合や管理会社は大目玉を喰らう、って嘆いていました。
この他、屋上庭園ってのも考えものです。
花火鑑賞できるってふれ込みで、パンフにもきれいな花火を浴衣のお嬢さんがウットリと眺めている写真が載っていますが、カギの管理や使用ルールが大変です。
最近八幡西区の新築間もない某マンションで3歳のお子さんがバルコニーから転落して亡くなったという痛ましい事故があっていますが、もし屋上庭園から落っこちるなんて事故が起きたらどうするのでしょう?

更に、最近では居住者の関係者の宿泊用としてゲストルームを設置しているマンションが増えてきました。
確かに売主さんからすればこのマンションの目玉設備として販売には貢献するのでしょうが、この維持管理や使用ルール作成には結構エネルギーを使います。
北九州ではあまり考えられませんが、観光都市に建っているマンションのゲストルームでは有料制の婚活パーティーに使用したり、あるいは全然身内でもない第3者を身内と称して宿泊させ利ザヤを稼ぐ入居者がいたりしてトラブルに発展しているケースもあります。
“ゲストルームがあるけど他のマンションの使用ルールを教えて”って管理会社さんからお問い合わせがあったりします。

住んでから以降の共用部分の維持管理や使用ルール作成、それを守ってもらうという困難な作業を行うのは全部管理組合だということを分かって買わなきゃですよ。
売主や管理会社がやってくれるなんて勘違いしていない?