マンション管理士の独り言・・・676

「管理規約改正or使用細則制定」

“共有は紛争の母”なんていう民法の格言があります。
一つのものを2人以上の複数人で所有すると必ずモメちゃう。だから民法では出来るだけ共有関係を解消して共有→単有にしようという工夫がなされています。
ところが分譲マンションでは共用部分というのがあることでわかるように、そのマンションを購入した人=区分所有者は、今まで見たことも話したこともない、年齢、性別、生まれ故郷、学歴、生い立ち、考え方、その他もろもろの全てにおいて異なる赤の他人の他の区分所有者と共有関係になります。
ですからモメちゃわないように管理規約や使用細則というのがあって、そのマンションを購入して区分所有者になる人はこの管理規約や使用細則を守んなきゃダメですよ。ってしています。

マンションを購入しようと考えている人は重要事項説明書や売買契約書よりも管理規約をしっかり読まなきゃ、ですよ。

分譲当初の管理規約は誰が作るかというと、売主とか管理会社さんが今までの経験とかノウハウに基づいて管理規約原案というのを作成し入居前に全てのマンション購入者に印鑑をもらいます。
「管理に関する承認書」って書類で、そこには“管理規約原案を承認します”って記載されていて、これに購入者全員が署名捺印すれは晴れて「管理規約原案」が「管理規約」となり発効します。

一旦発効した管理規約は、実際のマンションライフにそぐわないなんてなれば規約の改正または使用細則の新設で臨むことになります。
規約改正は区分所有法では、特別決議とされ区分所有者総数と議決権総数のそれぞれ4分の3以上の賛成が必要です。
またこの規定は強行規定とされ、4分の3という決議要件を5分の4にしたり反対に3分の2にしたりのどちらとも無効とされます。触っちゃいけない4分の3です。

これに対し使用細則の改正や新設は、普通決議での承認です。総会参加者の過半数です。
仮に総会に50%以上の区分所有者が参加していれば総会は有効に成立となりますが、普通決議は、この50%の参加者の過半数で承認です。
特別決議での承認が必要な管理規約の改正に対し使用細則に関するものは総会参加者の過半数ですから、随分低いハードルと言えます。

国交省は、大事な議案については使用細則の新設で臨むのではなく規約の改正で臨む方が望ましいって言ってます。
確かにそうでしょうが、実務的には規約の改正はとても困難な作業です。
築年数の経過したマンションでは総会に参加する人でさえ、区分所有者総数の4分の3には随分と足りないというのが現状です。
総会を開催しても管理規約改正議案は話し合われることなく、“否決されました”って発表しなくてはなりません。
“仮にこの総会に参加している人全員が賛成したとしても委任状などを合わせても4分の3には足りないので否決されました”って発表になっちゃいます。
そして否決されると、この議案に反対だった人に変な口実を与えちゃいます。

“否決されたジャン。現状のままでいいとなった訳じゃん。”

国交省の偉いお役人さんが言うように規約改正で臨むのが王道でしょうが、規約改正は4分の3以上の賛成が必要でハードルがとても高く、さらに否決となれば、少数の反対派に余計な口実を与えちゃう、という事を考慮し、できれば事前に賛成票を読むくらいの努力をしなくちゃです。

規約改正は承認されれば4分の3以上の人が承認したジャン、となってとても重い事実ですが、それだけ承認のハードルが高く、もし否決となったら反対派に余計な口実を与えることにも繋がりかねず、もろ刃の剣という側面もあります。