マンション管理士の独り言・・・684

「資産価値」

マンション購入の相談に際して、「AマンションBマンションとではどちらの方が資産価値があるでしょうか?」或いは「将来転売するときにどちらが高く売れるでしょうか?」と聞かれることがあります。
興味のある事柄だというのは理解できますが、「住まいを購入するというのは、損か得かのモノサシで測るべきものではなくて、出したお金に見合う生活が享受できるかどうかですよ」なんて言ってやんわりお断りしています。

確かに不動産業界では、どのエリアが値下がりしにくい、家賃は高額に設定できるというのはありますが、転売して儲けようっていう商売人ではないのですから、あまり敏感になる必要はないって思います。

最近面白い質問をお受けしました。
「購入を検討しているAマンションとBマンションでは管理規約が異なります。管理規約の違いが資産価値に反映することってありますか?」って質問です。
玄人がほれぼれするようないい質問です。答えは「あります」です。

新築間もないAマンションとBマンションとでは標準管理規約に沿った管理規約になっていますので、内容にそんなに差異は見られません。
その中で駐車場の扱いが大きく異なりました。
Aマンションでは住戸を売却したり賃貸したりする場合には、それまで使用していた駐車区画はその住戸の買主さんとか賃借人へ引き継ぎできるとなっています。
つまり売買に出す際のチラシに“敷地内に駐車場有!NO○○番”と記載することが出来ます。これならば購入しようとする人は、駐車場が敷地内のどの位置に確保されているのか一目瞭然です。
これは購入するかどうかについて判断しやすいし、売りやすく、ひいては早期に販売できる物件ともいえるでしょう。

これに対してBマンションでは売買や賃貸の時は、それまで使用していた駐車区画は一旦管理組合に返却し、希望者を募り大勢の場合は抽選となります。
この場合その住戸の販売チラシには“敷地内に駐車場確保。ただし場所未定。”とならざるを得ません。
「いい物件だけど駐車区画がどこになるのかわからないのじゃ、決めれないや」ってなってしまいます。
いずれは売れるのでしょうが、早期に販売できる物件とは言えないでしょう。

このように管理規約に“駐車区画は売買や賃貸の時は次の買主や賃借人へ引き継ぎできる”という方が、“引き継げず旦管理組合へ一旦返却”物件より間違いなく売りやすい物件だといえます。
では、“引き継ぎできる”とある方が“引き継ぎできない”とした管理規約より優れているのか?公平なのかと?というとそうではありません。

“引き継ぎできる”とある管理規約は全く不公平です。
新築時に“いい駐車区画”を確保できた人は、“あまりよくない駐車区画”の人と比較して、一般的に車両の出し入れもし易く、その上、住戸売却の際も早く売れる、高く売れる、となるとこんな不公平な管理規約はありません。
そのうち、この管理規約は不公平だって声が上がることが十分予想されます。
最悪の時には、住民が2派に分裂ってケースも見てきました。
こうなれば資産価値がどうのこうのっていう話ではありません。

マンション購入に際して、資産価値は重要な判断材料なのでしょうが、それよりも公平な管理規約なのかどうかに重きをおくべきですよ。

“駐車区画が引き継ぎできる、出来ない”ってことの重要な意味を理解しなきゃですよ。