マンション管理士の独り言・・・704

「総会で決議できること」

総会を開催するには、予め議案書を配布しなければなりません。
いつまでに配布するのかっていうと、標準管理規約では総会の2週間前まで、区分所有法では1週間前までとなっています。
市内マンションでは、まず間違いなくこのどちらかです。
それ以外にはお目にかかったことがありません。

そして総会では、予め配布された議案書に載っている議案以外は審議することが出来ません。話し合うくらいはいいのですが、議決をしても無効です。
何故かというと、予め配布された議案書を見た組合員が「今回は自分にはあまり関係ないので委任状を出して欠席しよう」とした場合に、総会当日議長が「今日はこんなに多くの方が集まりました。時間もまだたっぷり残っているのでついでにペットのことを話し合いましょう」としてペットのことが決議されました。
これを後で知った当該欠席組合員が「ペットの事を話し合うなんて議案書に書いてなかったよ。ペットのことを話し合うなら出席して意見を言いたかったのに」と不意打ちを喰らわされることとなるので、総会では予め配られた議案書に書いていること以外は決議しても無効となっています。

しかし総会の現場では、上程された議案に修正を加えられて承認を得る場合がたびたび出てきます。この修正議案がどの程度まで許されるかについて明確な基準はありません。
基本的な考え方としては、議案の本質を変えてしまう事や、議案より支出が増えることはアウトとなります。

本来の議案に真っ向から反するような議案を審議することは無効なのは言うまでもありません。
予め配布された議案には「ペット飼育を永代認めることについて」となっていたものを総会において「ペット飼育を認めないことについて」で承認を得ることは出来ません。
ただし「ペット飼育を認めることについて」議案を審議している最中に出された意見を集約し「ペット飼育を1代に限り認めることについて」はセーフだと考えていいでしょう。
また、「修繕工事を○○の範囲で発注する件について」という議案を「修繕工事を○○から少し範囲を縮小し△△の範囲で発注する件について」もセーフだと考えます。「範囲を広げて」は工事代金の増額にも繋がりますし、アウトでしょう。

総会へ上程する議案は、その年度の総会で組合員から委任された理事で構成された理事会で検討され議案化されます。
議案化し総会へ上程するという事は、「理事会でイロイロと検討したが、この議案がいいと思われるので承認してね」ということです。
「理事会ではあまりお勧めしないけど一応総会へ上程してみる。個人的には反対だけど皆が良ければそれでいいんじゃない」というスタンスは無責任ですし認められません。

委任状提出者の多くは、委任する相手方に理事長を選びます。
“理事長へ委任する”ってことは、“理事長はその議案提出者だからその議案に賛成のはずだ”って思っている場合がほとんどです。
その理事長が自分が加わって議案化したものに反対しちゃいけませんし、また議案の大幅な変更もしちゃいけません。
あくまで予め配布された議案書を見て、「理事長は当然この議案には賛成だろう。それを分かって理事長へ委任する」という委任状提出者の意思を無視することになります。

総会の折どの程度までの議案修正が認められるのか分かんないときは、その議案のまま採決し、否決という結論を出すか、或いは取り下げをしましょう。
そして理事会に持ち帰ってよく検討し再度臨時総会を開催して審議します。というのが王道です。