マンション管理士の独り言・・・706

「自転車を買った・・・②」

仲のいい3人で自転車を買ったっていうお話の続編です。
7,000円の自転車をAさん4,000円。Bさん2,000円。Cさん1,000円出して購入しました。
パンクを修理した費用負担で少し揉めましたが、そこは仲のいい3人組です。話し合いで解決しました。

Aさんはどうしてもバックミラーを取り付けたくてなりません。他の2人に相談しました。
「バックミラー付けようぜ。今ならオートバックスで700円であるよ。僕が400円出すから、Bさん200円。Cさん100円出してよ」。
これに対し、Bさんは「バックミラーなんていらないよ」。
Cさんは「バックミラーあれば安全だよ。付けようぜ」です。
賛成者Aさん+Cさんでこれは持分割合の7分の5に該当し、更に共有者3人のうち2人が賛成です。それでもBさんは反対です。
“じゃ多数決で決めようぜ。議案は「バックミラーを各自の共有持ち分割合の負担で設置することについて」だな。賛成の人、手を挙げてって”ことで設置が決まりました。
Bさんは「バックミラーなんて使わないのに。200円も出さされちゃった」と渋い顔です。

マンションでは、このような場合は総会を開催して承認を得ることとなります。
「共用部分の重大変更」には該当しないと考えられますので、標準管理規約では総会参加者の過半数での承認で可決となります。
適法適正に開催された総会での承認事項ですから、それに反対の組合員であってもその議決に従わなければなりません。この場合だと費用負担を強いられることとなります。

この自転車は黒色です。頻繁に乗っているAさんは黒色に飽きちゃいました。
“赤に塗り替えようぜ”です。

しかしBさんCさんは反対です。“赤なんて嫌だ。黒のままでいい”です。
そこでAさんが数で押し切ろうと強引に主張します。
「俺は自転車代金7,000円のうち4,000円も支払ってる。つまり7分の4という過半数を持ってんだ。過半数を持ってる者が塗り替えようと言ったら塗り替えるのが当然だろ」
これに対しBさんCさんは、「確かに割合でいけば7分の4持ってるかも知れないけど、3人のうち2人が反対なのを強引に塗り替えちゃダメだろ」です。
しかしAさんは引き下がりません。あの手この手でBさんを口説き落としてCさんに迫ります。
「僕とBさんが賛成で7分の6、さらに3人のうち2人が賛成なんだ。赤に塗り替えるぞ。文句はないな」です。
仕方ありません。Cさんは塗り替え費用の7分の1まで負担させられちゃいました。

民法の共有での考えでは、「共有物の変更」では他の共有者全員の同意が必要とされていますが、3人で話し合い、その結果、塗りかえが認められればそれはそれで有効となります。
CさんはAさんに押し切られたってとこでしょう。

マンションでは他の色への塗り替えは外観イメージが全く変わってしまいますので、「共用部分の重大変更」に該当すると考えられます。
この場合は総会を開催し、議決権総数及び組合員総数の各4分の3以上の賛成が必要となる特別決議です。
特別決議ですから4分の3という数字(承認要件)を上げたり下げたりの、どちらも無効とされます。

仲のいい3人ですが雲行きが怪しくなってきました。