マンション管理士の独り言・・・713

「中古マンションが売れなくなる・・・②」

前回は、修繕積立金の値上げが、中古として売りに出す時に足かせになるとつぶやきました。
新築時には3750円だった修繕積立金は20年後には4倍の15,000円に値上げされ、購入者から見ればその分だけ毎月の負担が増えることとなり、中古マンションとしては売りにくくなるってことでした。
購入者は、そのマンションの価格も気になりますが、ローンの支払いや管理費・積立金、駐車場代金などトータルの月の負担額で購入するかどうかを決定するからです。
いくら物件そのものの価格が安くたって、積立金が15,000円もして、毎月のローン支払額に加えてその分だけ負担が大きくなれば購入しないよってことです。

それでも売ろうとするならば売り出し価格を抑えるしかありません。
積立金15,000円は35年ローンの場合500万円の借り入れに相当します。
500万円も引けないっしょ!
まだまだローンの残債もたっぷり残っているのに、500万円も値引けば、ローンの残債に追いつかず、追い銭しなきゃなりません。
ですから、今後は中古マンションの売り出し戸数が減少することが予想されます。
仮に売りに出たとしても、価格が高止まりでそう簡単には売れないことになります。

市内新築マンションのチラシには、どこもかしこも「毎月のローンの支払に管理費・積立金、更に駐車場代金を加えても○○円ですよ。今お住いの賃貸のお家賃と比べてください。あなたは、まだ賃貸に住み続けますか?」って切り口のセールストークが載っています。
新築時に売りやすくするために、修繕積立金を低く設定し、いい加減な長期修繕計画を作成し、積立金の値上げは管理組合さんで話し合って決めてね、ってスタンスです。

現在新築マンションを分譲しているデベロッパーは分かっているのでしょうか?
そのような売り方が、将来中古マンションが売れなくなる事態を招来し、それはとりもなおさず、不動産業としての自分の首を絞めてるってことが。

低い積立金の設定は将来の中古マンションが売れなくなるってことだけに留まりません。
積立金が分譲当初の設定額の4倍になったら、当然ですがその負担に耐えられなくなる区分所有者が現れます。
40台でマンションを購入した人が20年後には年金受給者となり、4倍に値上がりした積立金の負担に耐えられなくなっちゃいます。
消費税だって値上がりしています。

一つの管理組合で積立金を支払えなくなる区分所有者が何人も出てくると、マンション管理が行き詰まり、強いては大規模修繕工事が実施できず、スラム化したマンションがあっちこっちに見られる事態を招きかねません。

分譲当初、売らんがために意図的に低く設定した修繕積立金は、将来の積立金の値上げを招き、その決果中古マンションとしての商品価値、競争力が下がってしまい、市場に出なくなる。または出ても売れなくなっちゃう。

もう一つは値上げされた積立金の負担に耐え切れず、滞納があっちこっちの管理組合で見られるようになり、管理組合の運営が出来ず、また大規模修繕が実施できず、スラム化するマンションが増えてくる。

更にもう一つ、“積立金の値上げでなんとかフーフー言って支払っているのに、マンション管理士なんて雇えるかい!”って、ごもっとも。