マンション管理士の独り言・・・732

「使えないじゃん、品確法」

品確法とは正式には「住宅の品質確保の促進などに関する法律」と言います。
民法の瑕疵担保責任期間を“瑕疵ある事を知ってから1年”というのを宅建業法で、“引き渡してから2年”としていました。
それでも消費者保護の見地から十分ではないだろうという事で、「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の浸入を防止する部分」については10年の瑕疵保証期間としました。
これだけ見れば消費者重視のアッパレな政策ですが、実際に瑕疵が発見されたときに奏功するかについては???です。

「構造耐力上主要な部分」というのは柱・梁・外壁・基礎・屋上などが該当するのですが、外壁に関しその仕上げは該当しないこととなっています。
具体的には代表的な外壁仕上げ材であるタイルが剥落した場合には、この品確法の適用はなく、瑕疵期間は宅建業法上の2年になってしまいます。
タイルの内側のコンクリート躯体そのものについては10年ですが、直接外部に接し、雨風にさらされるタイルは適用外です。
北九州どころか日本のマンションのほとんどは外壁がタイル張りですが、この剥落に関しては品確法の適用はありません。
タイル業界で作っている一般社団法人全国タイル業協会では自主的に保証約款を作成し10年の保証期間を設定していますが、この約款を使わなければならないわけではなく、つまり強制力はありません。
タイルは自重もあり剥落するととても危険です。もし剥落して人身や財産に損害を及ぼした場合、工作物に関しては無過失責任なのでその時の理事長さんは、どれだけ管理を十分に行っていたとしても責任は免れません。
ほとんど全てのマンションの外壁仕上げはタイルなのに、その剥落については2年の瑕疵保証期間と言うのが実態です。勘弁してよ~。

続いては「雨水の浸入を防止する部分」です。代表的なのが屋上防水です。

10年の瑕疵保証期間内に雨水漏水したら保証しますって事ですが、漏水個所は基本的には室内に限られます。室内なので解放廊下での漏水は適用外です。
一般的なマンションの場合、最上階住戸は天井に外か内かは別として断熱材が入っています。屋上防水から浸水した雨水がコンクリートスラブのクラックを経て、断熱材に浸透し、さらに天井材に染みこんで初めて漏水が確認できるということです。
室内で雨水漏水が確認できるっていうのはあまり目にすることがありません。屋上防水が切れていて屋上コンクリートに染みこんでいても室内まで漏水するというのはあまりないケースです。
ですからいくら屋上防水が切れていて踏むとジュワッと水が防水層から染み出てきても、“室内に漏水してないじゃん”となってしまいます。
いくら防水層の下に浸水していることが確認できても、現に室内で漏水していないと品確法の適用外って事です。

また屋上防水では、屋上の真ん中あたりを頭頂部(水上)とし、解放廊下側が水下になるように勾配を設定します。
このため勾配途中の室内で漏水することはあまり見られず、最上階解放廊下上裏に漏水が見られるケースがほとんどです。
しかし解放廊下上裏は室内でないため基本的には品確法の適用外となります。

“現在は室内に漏水していないけど、このままにしていたらやがて漏水するかもしれないので今のうちに補修しておきましょうね”っていう良心的な業者さんもないわけではないのが少しの救いです。