マンション管理士の独り言・・・735

「滞納管理費などの回収方法」

マンション区分所有者には管理費や修繕積立金を負担する義務があります。
しかし、全国の管理組合の30%強がこれらの滞納問題を抱えているというデータもあり、どこの管理組合でも管理費などの滞納問題に頭を痛めている様子が見てとれます。

滞納問題に対してはまずは予防が第一です。滞納を起こさせないようにする事です。
規約に管理費等滞納分の回収を弁護士に依頼した場合、その弁護士費用は滞納した人に負担させますよ、とか、滞納額には年14,6%の遅延損害金が発生するんですよ、なんて規定して滞納を生じさせないような工夫をしています。

それでも滞納が始まっちゃったら、滞納額がまだ少ないうちに回収するのが原則です。
6か月も滞納しちゃったら、その額も10万円を超えちゃって、そう簡単には支払えない額になっちゃいます。
そうならないように滞納1~2か月で電話や書面、或いは面談で督促を行います。

そこまでしても、それでも、もし滞納が発生してしまったら、少額訴訟とか支払い督促のような簡便な訴訟方法も用意されていて、これらは役員さんにそんなに負荷がかからない様になっています。
管理規約・総会の決議・議事録もキチンと整備されていれば少額訴訟などではまず間違いなく、滞納者に対し支払いなさいって判決が下ります。

“これで安心”ってなればいいのですが、事はそう単純ではありません。
どんな判決が下っても払えないものは払えないって組合員もいるのです。
「払いたくないから払わない」のでなく、「払いたいけど払えない」って方です。
そんな現実に出くわしています。失業して何年にもなり、預金も底をつき、仕事を探しているけれど高齢の為見つからない、住んでいる住戸を売ろうとしても名義が自分名義でないから売れない、リフォームしなければ売り物にも貸し物にならないけどそんなお金はない、
転居しようにも敷金や引っ越し代金さえ用意できないってそんな方です。

「何とかして下さい」ってお願いしたら、「電気が止められました」「携帯はもう早くから止められています」「もうしばらく何も食べていません」です。
見るに見かねて3万円も貸しちゃいました。バカみたいです。
皆からも“バカじゃないの!”って言われますが、大の男が涙流して「もうどうすれば良いのか、わかりません」って言われたら、貸すしかなかったんだモン。

何とかしなきゃなりません。このままじゃ、管理組合は滞納管理費が溜まっていくばかりで、しかも改善される可能性もありません。
まずは本人に仕事についてもらって過去の滞納額の精算はもとより、今後についてもキチンと支払えるようになってもらわなきゃです。
それが本人にとっても管理組合にとっても1番いい結論です。
でも、正直なところ期待薄です。

そうなれば次善の策として管理組合が積極的に関与ってなります。案やスキームは頭の中で出来上がっていますが、それを実現しようとなると組合員の合意形成がとても大変です。

「払えるのに払わない人」への対応は何とかなりますし、また少額訴訟など法も整備されています。
しかし「払いたいけど生活が困窮して払えない」方への対応はとても難儀します。