マンション管理士の独り言・・・737

「実際にやっちゃうと後々がとても大変」

管理費などの滞納が発生し、やがてその住戸が売りに出された場合、管理組合はその住戸を買った人(特定承継人)に対して滞納管理費の請求が出来ます。
そのように区分所有法にも管理規約にも記載されています。
管理組合は滞納を起こした張本人である前の所有者(売主さん)にも、新しく所有者になった人(買主さん)のどちらに対しても、それぞれ滞納分全額の請求が出来ることとなっています。
もちろん2人から全額を返済してもらっては滞納額の2倍ももらうことになっちゃうので、どちらか一人から返済してもらえばそれで打ち止め。あとは売主さんと買主さんの2人で話し合ってね、です。

多くの場合、買主さんに要求することが多く、また買主さんが返済することが多いようです。
売り払ってどこに行っているかわかんない売主さんを探し出して請求するより、黙っていてもやがてこのマンションに居住してくる買主さんに請求する方が楽ってこともあるようです。

滞納分を請求された買主さんは面白くありません。
「自分が滞納したわけでもないのに」と思いながらも「不動産屋さんに聞いてるよ」ってことで返済に応じてくれます。
中には、「滞納分は売主さんが支払うようになってる」って抵抗する人もいますが、それは通用しません。
「おたく(買主さん)が払ってから、それを売主さんに請求すればいいじゃん。買主さんと売主さんとの間の2人の取り決め何て管理組合には関係ないよ」で論破です。
不動産屋さんも゛滞納分は買主さんに請求されることがありますよ“って言ってくれているのですが、それを言っていないことが結構あります。

理事長が新しい所有者(買主さん)に滞納分の請求を行っても、「そんなこと前の所有者(売主さん)に言ってくれ。不動産屋さんからも聞いていない」です。
こんな場合は、訴訟手続きに入ります。
規約やしっかりした議事録があれば、まず間違いなく買主さんに対して支払い命令が下されます。
裁判所の判決となれば、買主さんもシブシブ返済に応じてくれます。
これで一件落着!かというとマンションライフはそんなに甘いものじゃありません。
遺恨バトルの開始です。

折角夢に見たマンションライフが開始早々、理事長から訴えられ、多額の滞納金を支払わされた買主さんは腹が立ってなりません。
エレベーターで当人同士が顔を合わせても、挨拶することもありません。それどころか、
総会やなにかの折に付け、その買主さんが理事長に対して喰ってかかります。
理事長さんからすれば、理事長として当然やらなければならない事を、管理組合の資産保全のためにやらなければならないことをやっただけ、なのに目の敵にされちゃいます。

法律的には訴訟提起で間違いなく回収できる債権であっても、同じマンションにこれからもずっと住み続ける人を相手にするのです。
事前のケアがとても大事です。
法律的には債権回収の道筋はあるとしても、実際に訴訟を起こすとなるとそれ以降のこともよく考えて起こさなきゃ、つまんないマンションライフになっちゃいます。

先日の総会は13時から17時までかかりました。最長不倒記録です。