マンション管理士の独り言・・・759

「困った原始管理規約」

原始管理規約というのは、マンション分譲時に売主さんや管理会社さんが予め用意している管理規約(案)のことです。
今までに経験やノウハウをもとに、“この管理規約原案でどうでしょう”として用意しているものです。
引き渡し時などに、署名捺印を求められる「管理に関する承認書」の中に“この原案で承認します”って一文が記載されていて、このようにして購入者全員から署名捺印をもらえば全員が承認したことになり、晴れて管理規約として発効するってなります。

本当は、購入者が集まってこれからの住みやすいマンションにするために生活ルールとなる管理規約を話し合って決めればいいのですが、そんなことは実際は不可能です。
顔を合わせたこともなく、管理規約についてそれほど知識のない方で集まって話し合っても、いつまでたっても規約何て出来っこありません。
そこで原始管理規約承認方式を採用するって、なります。

この原始管理規約に困った記載があります。別表というのが後ろの方についています。
そのマンションの住所や戸数、共用部分、議決権割合などについての記載がされています。
各戸の専有面積一覧表というのもついています。専有面積まではいいのですが、そのあとに各戸の管理費や修繕積立金の一覧表がついている場合があります。
これが、「困ったちゃん」です。

原則的には、これら別表も管理規約の1部をなしていますので、この部分を変更しようとすると管理規約の改正に該当しちゃいます。
つまりは原始管理規約の別表部分に管理費や修繕積立金の額が明記されていると、管理費や修繕積立金の値上げを行おうとすると管理規約の改正手続きを踏まないといけない、ってなります。
管理規約の改正は、議決権総数の4分の3という特別決議でしかも、この規定は強行規定ですから、3分の2に引き下げたり、反対に5分の4に引き上げたりしてもどちらも無効とされます。
4分の3というのは“かなり”というか“とても”もしくは“実現不可能”とい言えるくらいの高いハードルです。

しかし実務的には管理費はともかく、修繕積立金の値上げというのはよく議案化されます。普通決議で承認を得ている場合がほとんどです。普通決議は総会参加者の過半数ですから、規約改正の4分の3に比べると承認のハードルはグッと低くなります。実現可能です。
普通決議でもいいのかなと思って、マンション管理センターへ問い合わせると何とも歯切れの悪い回答です。
「管理規約に管理費などの額が記載され、その額を変更しようとする際は原則的には規約改正となり4分の3で臨まないといけないが、それじゃ実務的には無理だろうから・・・・、管理組合さんで決めてください。」
「管理規約改正で臨まず普通決議で承認を得た場合、後日管理費などの値上げに反対する組合員から、“管理費額は規約に記載されているから、この額の変更は規約改正しなきゃダメじゃん”と言われることがあり得ます。
では規約改正で臨んでください、と断言してしまえば承認にはとても高いハードルとなり、容易に管理費などの値上げが出来ないこととなり、それじゃ以降の管理組合活動に支障をきたすだろうし・・・管理組合さんで決めてください」です。

頭の痛いとこです。

売主さんや管理会社さんは、悪気があって管理費などの額を別表記載した原始管理規約を作っているわけじゃないとは思いますが、もう少し勉強してほしい、って感じです。