マンション管理士の独り言・・・791

「見做す」

10月30日の朝日新聞の朝刊に、「多数決って何?」って記事が載っていました。
記事を要約すれば、民主主義では、全員賛成を目標とするが、実際には無理だろうから、多数派の意見を全員の意思と「見做す」とする、という事です。
「見做す」という言葉の意味は、“見て、これだ。と判定したり仮定する事”とあります。

法律的に「見做す」という言葉を用いる場合は、“それに決めてしまおう”となります。
仮に後日、見做したことと異なる事実が出てきたとしても覆ることはありません。
「見做す」=決定と同義語です。
これに対し「推定する」というのは、“今のところ仮にそうしておこう。もし後日異なる事実が出てきたら、その事実に従おう。”とするもので、推定された事柄は後日覆されることもあり得ます。

朝日新聞の記事は、朝日新聞らしく??憲法改正について安倍政権が数の力で強引に押し切ろうとしている、ということを言いたいと思われますが、マンションでも総会での承認は基本的に多数決(過半数による承認)によって決まります。
「マンションは一番小さな民主主義」と言われる所以です。

しかしマンションでは何事も多数決で決めていくと多数派と少数派とで軋轢が生まれます。
マンションでは、国会や地方議会などと違い、そこに居住している者同士の意見対立ですから質が悪く、根が深いのです。
「あの議案に強烈に反対していた○○さんがエレベーターに乗っていた。一緒に乗るのが嫌だからやり過ごした」「廊下やエントランスで出会っても挨拶しなくなった」なんて声をよく聞きます。

ですから多数を得られそうな議案であっても少数派の意見にも耳を傾け、合意形成に努めなければいけません。
そうでないとマンションライフが殺伐としたものになってしまいます。
全員賛成何ていうことは理想論であって現実世界ではあり得ない事です。
しかしマンションでは“その議案や方針に賛成ではないけれど、理解できるよ”“強烈に反対はしないよ”“イヤイヤながらだけど協力はしちゃる”くらいには持っていきたいものです。

強烈な反対者を出さないためには、透明性や公平性の確保などと言われますが、何よりまずは適宜な情報公開だと考えます。
掲示物などでタイムリーに理事会などの方針や審議状況を報告することが重要です。

また記事にはこうもありました。多数決であろうが憲法に反することは無効だ。多数派の思い通りにさせないように、憲法で人権の保障や権力分立などを定めている、です。
これをマンションに当てはめれば憲法=管理規約です。管理規約に反する総会の決議は無効です。
管理規約を良く読んで、咀嚼して、場合によれば今のマンションライフに合致するように改正してより民主的な管理組合運営に努めなければ、です。