マンション管理士の独り言・・・796

「大規模修繕工事でのマンション管理士の役割」

前回は、大規模修繕工事について信頼できる建築会社へ設計~施工までを一貫して発注する「責任施工方式」と、設計+監理と施工とを分けて依頼する「設計監理方式」との違いを通して、第3者の専門家の目が入り工事精度も確保できる「設計監理方式」をお勧めしました。
つぶやき主は「責任施工方式」「設計監理方式」のどちらも経験していますが、明らかに「設計監理方式」の方が勝っています。
流石に経験のある1級建築士さんは違うものです。専門的知識や現場管理には目を見張るものがあります。

では大規模修繕工事は「設計監理方式」として1級建築士さんに任せておけばいいのか?ですが、それだけでは不十分です。
建築士さんは設計や現場管理には詳しくとも、大規模修繕工事に関して管理組合の意思決定方法や手順については素人同然です。
何をどのようにやっていいのかわかりません。
大規模修繕工事というのは共用部分の補修工事を皆が積み立てた修繕積立金を取り崩して行うわけですから、業者決定については透明性・公開性・公平性の確保が何より重要です。「現在このように進めていますよ」「施工業者については組合員の皆さんから紹介を募りますよ」「公平に共通仕様書で見積もりをとりますよ」というように掲示などで情報の開示、適宜なアンケート実施、数度の臨時総会や説明会の実施を丁寧に実施することが必要になります。

誰かが自分が発注したい業者にいつの間にか決まっていた、と後ろ指をさされないようにしなければなりません。つまりは合意形成です。
この合意形成がある意味一番重要で、そして一番難しいものです。
これを行うのがマンション管理士です。
あくまで主体は理事会や修繕委員会ですが、それらの会議で専門的見地からのアドバイスや資料作成、また現場や建築士との橋渡しなどを行います。
大規模修繕工事の発議から竣工までには、少なくとも4回程度の総会開催が必要です。その他に説明会もしなくちゃ、です。

また、総会では要領よく議案審議を行わなくちゃです。
例えば、塗装の色決めをしなくちゃならないときに、その都度総会を開催していたら、何度総会を開催しても足りません。要領の良い議案を作成しなければなりません。
また、「○○○○に関しては、理事会に任せてね」って予め理事会一任を議案化し承認を得ておく、ということも必要になります。
いつ、どのタイミングで、どこまで理事会に任されていいのか?などについて専門的見地から、加えて経験からアドバイスします。

皆が積み立てた修繕積立金を取り崩して大規模修繕工事を行うのですが、その一方で決めるべき時には決めていかないと、職人さんが手待ちの状態となってしまいます。
マンション管理士は、総会開催や業者選定、現場や建築士との打ち合わせ、理事会と現場などとの橋渡し、更には資金不足の際の借り入れ手続など大規模修繕工事がスムーズに実施されるように、全体を鳥瞰する役割を担います。

大規模修繕工事では、1級建築士とマンション管理士が車の両輪です。