マンション管理士の独り言・・・797

「大規模修繕工事時の理事会の役目」

前回、前々回と大規模修繕工事時の建築士とマンション管理士の役割についてつぶやきました。
仮に、つぶやいたように設計監理方式を採り、1級建築士を採用し、合意形成のためにマンション管理士を雇えば、それで大規模修繕工事が上手く行くかというと、そうではありません。確かにそれら専門家を採用すれば、理事会さんの負荷はぐっと軽くなりますが、それだけでは十分ではないのです。
当然ながら管理組合の意見を反映させ、最終的な決定権を持つ理事会さんがしっかり機能しなくてはなりません。
1級建築士やマンション管理士には決定権はありません。
最終的な決定権は総会で委任を受けた理事会にありますし、建築士や管理士は理事会の判断を仰ぎ、また承認を求めます。

具体的な理事会さんの役割は以下のようになります。
① 合意形成作業。アンケートの実施や説明会開催。臨時総会は何回も開催しなくちゃです。アンケートは工事着工前。足場解体前。足場解体後。の3回は最低でも必要です。
その都度の議案作りや議事録作成などは管理士が主体的に行いますが、やはり理事会さんのお智恵が必要です。

② 確認作業。クラック数を示したマーキング作業での確認。足場解体前、足場解体後、竣工、1年点検に検査が必要です。屋上防水検査もあります。ヘルメットを被って足場の上を歩く事だってあります。その他塗装使用済缶の確認など。

③ 決定作業。塗装色やタイル色決め。追加して工事を実施するカ所の決定。
色決めや追加工事の発注に関しては、本当ならばその都度総会を開催して組合員の承認を得たいところですが、それには頻繁に総会を開催しなきゃならず、あまり現実的ではありません。
また、総会で承認が得られるまでの間は工事がストップし、職人さんが手待ちになるって事態にもなり兼ねません。
工事の進捗に合わせて、タイムリーに決定しなければいけないことが後から後から出てきます。
理事会さんで決定できるような仕組みを作っておく必要があります。
そこで総会開催時に、「色決めやそれほど金額がかからない追加工事に関しては理事会に一任する」って議案を承認してもらっておくことが必須となります。
当たり前ですが、多額になるような追加工事の発注に関しては、総会で承認を得るという手間暇を惜しんじゃいけません。

④ 現場との打ち合わせ作業。工事期間中は、少なくとも2週間に1度は現場定例会議が開催されます。現場から工事の進捗状況や翌週の工事予定などの報告があります。また、「○○日までに○○の色を決めてください」何ていうリクエストが頻繁に依頼されます。
その他、建築士や管理士からの報告などもあり、また、「このようにしたいので承認願います。」もあります。

この他、現場が動き出したら建築士や管理士、現場代理人と臨機応変に打ち合わせが発生します。
大変な作業です。大規模修繕工事を上手に安全に行うには、設計監理方式とし、さらに合意形成のためにマンション管理士を採用し、それらと理事会が連絡を密にとりながら実施する、という進め方が圧倒的に1番だと思います。