マンション管理士の独り言・・・816

「もしも・・・野鳩餌やりオジサンがマンションに住んでいたら」

朝のモーニングショーで、野鳩の餌やり迷惑オジサンというのをやっていました。
賃貸アパートに住む60代後半の一人暮らしのオジサンが、もう何年も自宅前の道路で野鳩に餌をやっていて、その周辺は鳩の羽毛やフンで悲惨な状況でした。
レポーターが「どうして、野鳩に餌をやるんですか?ご近所の皆さんは迷惑していますよ」なんて質問すると、「うるさい」と一蹴し、バケツの水をぶっかけるというトンデモナイ親爺です。

町内会長さんが意見しても同様に殴られそうになった、なんて言ってました。
コメンテーターは、喘息の原因にもなるし、鳥インフルエンザだって怖いし、なんて言っています。
自治体の担当者が出てきて、「現在、迷惑防止条例を立案しているところです」なんて悠長なことを言っています。

同じような事例がマンションでも起こっていました。こちらは裁判にもなっています。
野鳩に餌をやり続けるアンポンタンがいます。
フンや羽毛、羽音でマンション住民の生活に重大な影響が発生しています。
餌やりを止めるように!と何度も理事長さん、役員さんが直接注意しても聞く耳持たずで、相変わらず餌をやり続けます。
しびれを切らした管理組合が「共同の利益に反する行為」としてこのアンポンタンに対して訴訟を起こしました。

裁判所は、野鳩への餌やりが共同の利益に反する行為かどうかを判断しました。
そして、このアンポンタンに対し、「このマンション管理上多額となる金銭的な被害を生じさせたことが認められる。このアンポンタンの餌やり行為は管理組合に対し不法行為を構成するものとなる。本件マンションの外壁の鳩糞汚損についての洗浄費用に加え、本訴訟に要した弁護士費用とを合わせた20万円の損害金を払え」と判決しました。
裁判所ですから、アンポンタンとは言いませんが、裁判官は本音では、「この忙しいのに!ふざけたことするな、アンポンタン」と言いたかったはずです。

戸建てでは自治体担当者が「迷惑条例を立案しています」という悠長な対応が、何故マンション管理組合ではサッサと訴訟へ持ち込めて、餌やりの中止命令のみならず20万円の損害賠償金まで勝ち取ることが出来たのかって言うと、それは管理規約があるおかげです。
もうちょっと言えば、分譲マンションでは入居者は全員、管理規約を遵守しますと約束して入居している事となります。
「この管理規約を守りますよ」って記載している誓約書にサインして入居しているのです。
「アンタ入居に際して、管理規約を守りますよ、って誓約書にサインしてるじゃない。約束してんだからチャンと守ってよ」と理事長さんは当然のように言えます。
それでも守らなけりゃ、前述のように訴訟を起こします。
裁判所でも「“共同の利益を損なう事はしてはいけない”って記載している管理規約に誓約して入居しているじゃん」という意味は大きなものを占めるのです。

戸建て住宅地ではこのような規定はありませんから、迷惑防止条例を急ぎ作らなきゃ、という対応になってしまいます。

マンションに入居する人は、購入者であろうと、賃借人であろうと、同居人であろうと、全員が管理規約を守らなきゃならない、守ると約束してこのマンションへ入居してきた、って事知ってました?