マンション管理士の独り言・・・819

「修繕積立金の値上げ」

最近では新規分譲のマンションの長期修繕計画もかなり精度が上がってきました。と言っても以前に比べれば幾分マシになったという程度ですが・・・。
未だに、数量や単価、工事内容の記述の無い長期修繕計画を目にします。
数量や単価、工事内容がないのに必要となる金額だけは提示されています。
どのようにしてこの金額を算出したのか、全く不明です。
おそらくエイ、ヤー、ターで決めちゃったのでしょう。

また、屋上防水補修工事に関して、第1回目の補修と第2回目の補修とが同じ金額で算出されています。
通常1回目は既存防水層を残して、その上に被せる被せ工法を採用しますが、第2回目では1度被せたものの上にもう一度被せるってことは、工法的にも荷重の面でも採用しません。
2回目は全撤去し、防水層を新設となります。その分2回目はコストアップになります。
まさか、1度目も2度目も全撤去~新設としているとは思えませんが・・・。

積立金の値上げについては「5年ごとに値上げ」としっかり記載しているところが増えて来ています。
値上げ幅や値上げ時期については、もう少し検討が必要だなと感じますが、積立金は分譲当初のままではなくて、数年おきに値上げされるものだということを予め購入者へ知らせておくのはとても良いことです。
積立金の値上げは、総会の決議事項です。
「購入時に積立金が値上げされるって聞いてないよ」っていうご意見でしばしば紛糾していましたから、これがなくなる、少なくなるって期待が持てます。

ところが購入時に「積立金は5年毎に値上げされますよ」って購入者へ予めアナウンスしていれば簡単に値上げできるかっていうと、実務上はそう簡単な話ではありません。
値上げする前に、現在の管理を見直し、余計な支出を省いてからでないと、そう簡単には値上げが出来ません。
余計な支出とは?については、組合員いろいろでそう簡単に合意できるものではありません。
例えば、ゴミだしサービス、給水ポンプのメンテ、玄関オートロックのメンテ、定期清掃の頻度、管理人の勤務時間、エレベーターの保守管理についてフルメンテかPOGか更には独立系メンテか、全戸一括契約のインターネット、防犯カメラのリース、エレベーター内のマットの交換、照明の点灯時間や間引き点灯などキリがありません。

アンケートを実施しても、「不要なサービスだ。廃止すべきだ」「そのサービスがあったから購入したんだ、廃止すべきでない」など意見も真っ二つに割れることもしばしばです。
更に例えば足の悪い方にとっては、ゴミだしサービスは必須だし、その方以外の全員が廃止を希望しても、簡単に廃止するわけにもいかないって、事もあります。

また、管理費や修繕積立金の滞納があった時は、総会では「積立金値上げの前に、滞納分を回収する方が先でしょう」なんてごもっともな意見が出されます。
しかし、これもスムーズにはいきません。
滞納額にもよりますが、数年かけても回収できれば上出来って具合です。
滞納があるままの状態では、積立金の値上げ議案は簡単には承認いただけません。

積立金の値上げには、当初の長期修繕計画に積立金の値上げ計画がキチンと明記され、それを購入者全員へ周知している事、管理費などを見直し余計な支出を省く事、更には管理費など滞納あれば、その回収の目途を付ける事、この3点が必須ということをお忘れなく。