マンション管理士の独り言・・・853

「議決権行使書」

標準管理規約第46条第4項には、「組合員は書面により議決権を行使できる」と規定されています。
総会前の1週間か2週間前に配布された議案書を見て、「この日は用事があって総会には参加できないな。でも、他の誰かに委任するのも嫌だ。書面によって自分の意思を示そう」と考える人のために書面による議決権行使が認められています。
しかし、この規定の文末は“できる”という文言で結ばれています。
“○○するものとする”或いは“○○しなければならない”ではありません。
“できる”という場合は、“してもしなくても良いですよ。それぞれの管理組合で検討してね“という意味です。
“○○するものとする”或いは“○○しなければならない”ならば、そうしなきゃ管理規約違反ですから、必ずしなきゃいけません。

つぶやき主の印象では、議案書に委任状のほか、議決権行使書を添付している管理組合さんは50%くらいかなって、思います。
議決権行使書を添付しない理由の主なものは、“ただでさえ、総会参加者が少ないのに、議決権行使書を添付すると、なお一層参加者が減るじゃん”です。
ごもっともです。
また、議決権行使書を添付する場合には、議案書を読んだ人がその議案の中身を理解し、賛成か反対かを判断できるだけの内容としなければなりません。
議決権行使書を添付する場合には、委任状添付だけの時よりも、議案の説明文の中身が充実したものでなければならないのです。
議案書としての精度を高めなければならない、というハードルの高さも議決権行使書を採用しない理由の一つのようです。

議案の中身が要領を得ず、何について賛成か反対かを求めているのかもわからない議案書なのに議決権行使書が添付されている場面に出くわします。
こんな中途半端な議案書に議決権行使書を添付する方もどうかしているのですが、そんな議案書でもヘッチャラで議決権行使書を提出する組合員もいますから、お口あんぐり、です。

議決権行使書と委任状とを提出される方がいます。提出するならどちらか一方だけですよ、と書いていても両方提出しちゃいます。
こんな場合は、当然ですが議決権行使書の方を優先します。委任状より議決権行使書の方が表意者の意思が反映されていると考えられるからです。

「議決権行使書に賛成・反対の○印ないときは議長に一任とします」というのも見かけることがあります。
多くの場合、議長=理事長です。更に理事長は、その議案の提案者であって、その議案を通してね、ってスタンスです。要するにその議案には賛成に立場です。
従って、「議決権行使書に賛成・反対の○印ないときは議長に一任とします」との規定は賛成という結論になるのです。
これは乱暴です。賛成にも反対にも○印を付けないというのも表意者の意思です。
それを賛成に半ば強引に持っていくのは乱暴です。
このような場合は、棄権としなくてはいけません。

何としても議案を通すために(過半数の賛成を得る)に自分の都合のいいように議決権行使書や委任状を作りこむ理事長もいるから、これもお口あんぐりです。