マンション管理士の独り言・・・854

「投資マンション」

売れない芸人なのか、見たこともない芸人さんが、投資マンションのテレビコマーシャルに出ています。「僕にもできる!」って感じです。
北九州でも戸数が大きいマンションになると、実需だけではさばききれないと考えるのか、ワンルームや1LDKという住戸を併存させて売り出す場合があります。
3LDKや4LDKという実需に投資目的のワンルームなどを混ぜ込んでいるマンションです。

実需に投資目的の住戸が混ざったマンションは管理面からすると非常に厄介です。
自分たち家族が快適に住もうとして購入する人と、自分は住まずに人に貸して賃貸収入を得ようって考えている人とでは価値観に違いがあり過ぎます。
それらの人たちの間で合意形成をしなくてはならないからです。
投資目的であっても区分所有者ですから、共用部分の共有者ですし、議決権もあります。
自分では全く住むつもりがなく、興味があるのは利回りだけです。
建物の維持保全や住まい方のルールに関してはほぼ無関心です。
そこに住んでいないので、理事長などの役員に就任することもまずありません。

大阪のとあるマンションです。
投資目的の住戸が混在しています。投資目的の区分所有者の事を不在区分所有者って言います。
そこに住んでいないので役員に就任しない。住んでいる人たちの間だけで順番に役員就任するので、頻繁に順番が回ってくる。役員がしっかり管理しているので、エレベーターもメンテナンスが行き届いているし、廊下も掃除が出来ている。切れた照明もない。
管理が行き届いているという事で、高い家賃が設定できている。
不在区分所有者は、役員にならなくていいという組合員としての義務を果たしていないのに、住んでいる人たちで回している管理組合のおかげで高い家賃が設定できるという、利益だけを得ている。
これは“おかしくね?不公平だろう”という事で、不在区分所有者を狙い撃ちにして一律2500円の管理費の値上げを行いました。不在区分所有者協力金という名称です。
これはやり過ぎだろう、ということで裁判になり最高裁までもつれ込みましたが、2500円の不在区分所有者協力金を徴収することが認められました。

北九州のとあるマンションです。劣化が激しく大規模修繕工事をしなくてはならない時期です。しかし、大規模修繕工事をするだけの費用が修繕積立金では不足です。
不足するのが目に見えていましたから、何度も修繕積立金の値上げを議案化しましたが、投資目的の組合員の反対により承認されていません。
近々迫った大規模修繕工事時には、それまで積み立てた積立金では賄えませんので、一住戸あたり30万円の一時金が必要です。
この議案に対しては案の定、投資目的組合員が猛反発です。
古くなってきていますので、入居者も埋まりません。つまり家賃収入がないのです。
家賃収入があろうがなかろうが、管理費+修繕積立金は毎月負担しなければなりません。
その上に一時金として30万円も支払えるか!って感じです。
大規模な修繕は行わず、小規模な修繕工事でお茶を濁しました。
このマンションは古くなって、さびれて、煤けていくだけです。
新規の入居者も期待できません。投資目的の人はどうやって管理費などを支払っていくのでしょう?

管理運営上、投資目的で買われる人はとても迷惑です。
3LDKや4LDKに混ざって投資目的のワンルームや1LDKの住戸が混ざっているマンションを購入しようとする方は、将来のマンショントラブルに巻き込まれることを十分覚悟して購入しなくちゃです。