マンション管理士の独り言・・・871

「アパタワーズ神戸三宮」

最近頻繁にテレビのワイドショーなんかで取り上げられています。
築12年のタワーマンションですが、重さ20キロもあるタイルの塊が落下し、その補修費用約2億円を損害賠償請求しているものです。
タイルの接着力アップのための目アラシなどを行っていなかったことを施工不良として訴えているものです。

これに対し施工会社などは経年劣化だとして争う姿勢を見せています。
築12年ならば、第1回目の大規模修繕工事の時期になりますが、タイルの剥離率が15%というのはちょっと多いかなという印象です。
多い所でも10%はいきませんし、多くのマンションの長期修繕計画でも剥離率は5%程度としているところが多いです。
落下した理由のすべてが経年劣化というのはちょっと無理がありそうです。
しかし管理組合にとっては、タイル剥落は経年劣化ではなく、施工不良だと証明しなければならず、これはかなり難しい作業になると思われます。

20005年の9月に竣工しているようですが、建築工期は適正だったのでしょうか?
売主が売り上げ計上するためには引き渡しが必要なので、適正な工期よりも売主の売り上げ計上優先の引き渡し日とすることはよく行われています。
市内でも3月初旬竣工~3月末引き渡しなどのマンションを見かけますが、適正な工期なのか、キチンとした工程を経て作業が行われたのかなど怪しいなって感じています。

つぶやき主が3年前までお世話していた北区のマンションを思い出します。
アパタワーズマンションと同じような事案でした。
具体的にはつぶやきませんが、管理組合さんは大変でした。大迷惑でした。
最終的に管理組合と売主とは迷惑金支払いで合意しましたが、一部組合員はそれでは納得せず別途訴訟を提起しました。
訴訟の目的は、タイル落下という事でマンションの資産価値が低減した。その分を補償しろ、というものでした。
第1審では、その要求は退けられました。
その折、管理組合の意向に反して訴訟を提起した人に対して反感を持っていた人が法廷に来ていて、敗訴が決まった時に拍手していた、ということもあっています。
組合員間に亀裂が走った象徴的な出来事です。

売主からも管理組合に対して、「一部の方が管理組合の方針に反して訴訟を提起したではないか?管理組合は一枚岩ではないのか?当事者となり得るのか?ちゃんと意思統一してもらわなければ困る」など詰問されたこともあったようです。

控訴審でこの訴訟は認められました。資産価値低減について売主は原告に対し損害賠償をするよう命じられました。
アパタワーズでも今後、今回の訴訟とは別にこのような訴えが提起されることが予想されます。

管理組合さんは大変です。多くのいろんな考え方の人が住んでいるのがマンションです。
その方たちの意見を取り入れ合意形成を図るのが何より大変です。
一枚岩で臨もうとしても、そう上手くは行かないかもしれません。
また、訴訟絡みですので、管理規約に則った総会の開催が求められます。適正な手続きを経た有効な議決としなければならないからです。

このマンションの組合員は、終の棲家として、快適なマンションライフを夢見て購入したはずです。
マンション売主は、ただ単にマンションという器を売るというのではなく、その方の快適な住まいを提供するという企業としての責任、社会的使命もあるはずです。
真摯な対応を望みます。