マンション管理士の独り言・・・873

「理事長解任」

久留米のマンションで、管理会社変更に際し理事長と他の理事長とで意見が合わず、理事長がいないところで理事会を開催し、その場で理事長職を解任したそうです。
“理事会で理事長を解任できるかよ”って、理事長が訴訟を起こし、ついには最高裁まで行っちゃって、最高裁では理事会で理事長を解任できるという判断が出された、という事例があっています。NHKでも取り上げられましたので、多くの方がご存知の事でしょう。

これを聞いたときのつぶやき主の第一印象は、「現場ではそんなのやってるよ。へっ、いけなかったの?」です。現場では窮余の策で、結構行われている手法です。

役員さんについては「今年度役員選任について」と議案化され総会で承認を求めます。
この議案だけは挙手で行わず、“今年一年間よろしくお願いします”って意味を込めて、拍手で承認とする管理組合さんが多いです。
総会で承認された新役員さんは、役員の互選により理事長や副理事長などの役職が決められます。
互選というのは、簡単に言うと、役員間で役職を話し合って決めるってことです。
実際には総会後も新役員さんに残っていただき、役員さんの間の話し合いで役職を決めていきます。
その際、副理事長には多くの立候補がありますが、理事長職には誰一人として手を上げません。
そしてその結果、アミダくじによって役職が決まっていくというのがよく目にするパターンです。
規約には、役員選任は総会で、役員の互選で役職を決める、となっていても総会前にあらかじめ役職を決めておいて、総会時には理事長○○さん、副理事長△△さん、会計担当理事□□さんとして承認を得ている管理組合さんも結構目にします。

役員間の互選で理事長を選んだのだから、理事会で理事長職を解任出来るっしょ、と思っていました。理事長職を解任するのであって、解任された理事長は理事になるわけで、総会で承認された理事職を解任するわけではないからです。

規約では、組合員+議決権総数の5分の1以上の組合員の発議で総会を開催し、その場で理事長を解任するという方法や、監事が招集権者となって総会を開催しそこで理事長解任という方法が定められていますが、実務的には結構ハードルが高いです。
つぶやき主は2度この5分の1以上の組合員を集めて臨時総会を開催したことがありますが、理事長サイドの巻き返しにあって、総会は開催できたものの、すべての議案は否決されちゃいました。
総会を開催するのも大変、開催できても承認を得るのがまた一苦労って手続きです。

そんな中、管理会社よりこの“理事会で理事長解任”という手法の提案があり、「なるほどその手があったか」と感心したことを覚えています。
しかし今回最高裁は、「規約に理事長就任の取り決めはあるが、解任についての取り決めはないので判断した」ってことのようです。実際の現場の後追いです。

どの様な経緯でことココまで至ったのかは不明ですが、管理組合内部でのゴタゴタには勝者はいません。関係した皆が敗者です。
最近は管理組合内部でのゴタゴタの相談が良く持ち込まれます。
管理組合vs売り主、管理組合vs管理会社ならば正義の味方みたいで気持ちいいのですが、管理組合内部でのトラブルについては精神衛生上好ましくないって感じです。

これから益々増えそうなトラブルです。