マンション管理士の独り言・・・880

マンション管理士の独り言・・・880

「タイル補修」

もう足掛け10年くらいお世話している北区のマンションです。竣工当初からお世話しているので築後10年です。そろそろ第1回目の大規模修繕工事をしなければならない時期に来ています。
昨年末に劣化診断を実施しました。
コンクリートの中性化検査や、塗膜の付着力試験、シーリング接着力試験などのほか、手の届く範囲でパールハンマーによる打診検査も行いました。

6階タイルに大量の浮きが発見されました。何故か6階に集中しています。
建設中、6階のタイル職人さんだけが下手だったのか?或いは、天候が悪いのに無理して貼ったのか、それ以外の理由があったのか、はわかりませんが、6階だけタイルの浮きがアッチコッチに沢山です。
大規模修繕工事の実施が近々と決まっているならば、剥落して人を傷つけたりしないように、劣化診断時にワザと叩き落とします。

しかしこのマンションでは大規模修繕工事は、近々には予定していません。
危険だからと剥離タイルを叩き落とすと、大規模修繕工事までの期間、コンクリート素地がむき出しのままになって、外観的にもみっともないし、何よりコンクリートが天日や雨水に直接さらされることになります。これはコンクリートの劣化や中性化が進行し建物にとって良いことではありません。

理事会では、補修すべきか?或いは大規模修繕工事時まで何とか持たせるか?について検討しました。
大規模修繕工事時まで待つのならば、それまでの間剥落を防ぐためにガムテープなどでタイルを養生する、という方法があります。
しかし1部分だけ外壁にガムテープを貼ると逆にそこだけ目立ってしまいます。
また、完全に雨水の侵入を防ぐことは出来ないので、剥落の危険性は消えませんし、何年もガムテープだけで持つとは思えません。
この方法はあくまで暫定的な対処法です。

補修する、となると何よりお金がかかります。6階の外壁なので足場を組むか、ゴンドラでの作業となります。
近々ではないにしても数年のうちに大規模修繕工事を実施することは決まっていますので、
無駄な出費の様に思えてなりません。
補修方法に関しても、エポキシ樹脂注入という本格的な補修方法や、ネットで覆ってしまうという簡易な方法などいろいろ検討しました。

数社から見積もりを取り、ゴンドラと足場の金額の比較、ネットとエポキシ樹脂注入などの優劣を検討しました。
その結果、ゴンドラ作業でエポキシ樹脂注入という方法で補修するという事になり、一番安かった業者さんへ発注することに決定しました。

もしタイルが剥落したら大事故にもつながりかねませんし、マンションとしての外観も大事ということに重きを置いた決定です。
補修するとなれば、少しでも早い方が良いに決まってますし、またこの工事は保存行為に該当しますので、理事会の判断だけで決定できます。

「○○日からタイル補修工事を行います」という掲示で皆様へお知らせです。
すると、“大規模修繕工事時まで待てば余計な出費とならないのに、タイルなんてそう簡単に落ちないよ”という苦情が寄せられました。
大規模修繕工事時に一緒にやってしまえば余計な出費とはならないことは十分に分かっています。タイルもそうやすやすと落ちないこともわかっていますが、それでももし落ちたら危ないっしょ、です、
苦情を寄せた方のご意見・心情もよく理解できますが、理事会とすれば最善な方法だと考えています。
理事会でもいろいろと検討した結果だと受け止めてもらえないかしら・・・。

合意形成はホントに難しい・・・。