マンション管理士の独り言・・・882

マンション管理士の独り言・・・882

「皆さん、人がいいんだから」

新築分譲物件でホームページに残戸数が乗っていたりします。
「残戸数5戸」ってな感じですが、多くの場合、あれは嘘。嘘ぴょ~ン、です。
「残り少ないから早く買わなきゃ、なくなっちゃいますよ。」「売れ行き好調物件なんですよ。」ってことをアピールしたいからの話法です。

ちょっと考えればわかりますが、そもそも“残り”って何なの?です。
まだ契約していない住戸が“残り”なのか?
契約の一歩手前の申し込みに至っていない状態の住戸が“残り”なのか?
契約の一歩手前の申し込みの、更にもう一歩手前の保留に至っていない状態の住戸が“残り”なのか?
売り主さんによれば、保留の一歩手前の“検討”まで用意しているところさえあります。

仮に実際に申し込みとなっている住戸であっても、ローン審査で不承認となれば契約には至りません。
販売センターに行けばわかりますが、販売状況表の売約済の赤いバラマークはその都度微妙に違っています。
“アレッ。前回来たときは売約済だった住戸のバラマークが外れてる。なんで?”って聞いてみて下さい。
“実は申込みいただいていましたが、ローン審査で落ちちゃいまして”って言います。
続けて“良かったですね。ご希望の住戸が空きましたよ”です。
そもそも当初より本当に申し込みされていたかどうか、怪しいものです。
この辺りの事情は、販売センター長だったからよくわかります。

その販売センター長だって、実際の残戸数は把握できません。
販売センター長ができないのだから、支店や本店だって把握できません。
営業マンが必ず本当のことを言うとは限らないからです。
「先月もボウズ、先々月もボウズ、今月何とか申し込みを1件いただいたが、キャンセルになっちゃった。販売センター全体でも今月は契約数が少ないし、そんな状態で、キャンセルは言い出せないよな。次に申し込をもらった時に、一緒に言おう。」となるのは心情です。

販売センター長だって部下から正直な報告を受けたとしても、「今月は契約数も伸びていない。キャンセルについては来月報告しよう」となっちゃいます。その連鎖で、正確な残戸数は誰も把握できないのです。

それでも残戸数を公表するだけまだましです。新聞チラシにも、ホームページにも、販売センターに販売状況表さえ置いていない、“一体いくつ売れてんの?”って全くシークレットのところもあります。
自分の検討しているタイプ以外の販売状況を出さない物件はまず売れていない、と思って間違いありません。
売れていれば、前述の「あと残り○戸。お急ぎください」なんて煽る販売手法がとれるからです。

本当なのかどうかをよ~く見極めなきゃ、です。
あまり、売主公表の「残戸数」には惑わされないように。
通常の場合、公表「残戸数」の倍くらいの残戸数があると言っても過言ではない、って感じですね。