マンション管理士の独り言・・・912

マンション管理士の独り言・・・912

「議決権」

やっと総会ラッシュが終わりました。年度末を3月末とし、年度終了後2か月以内に総会を開催するとしている管理組合さんが多いので、この時期はどうしても総会ラッシュとなります。
管理会社フロントマンのこの時期の常套句は、「あと、いくつ総会残ってんの?6月になったら飲みに行きましょう」です。

年々総会への出席者が減少しています。
大規模修繕工事なんかの重要議案があるときはそれなりの参加者もあるのですが、平時(?)の総会では出席者は少なくなる傾向です。
それでも総会は有効に開催されます。
総会が有効に開催されるには、組合員の半数以上の参加が必要です。定足数と言います。
参加者のカウントの仕方は、実出席者+委任状提出者+書面による議決権行使者です。
総会に実際に出席した人が少なくても、委任状提出者や書面議決権行使者とを加えて組合員総数の半数以上あれば総会は有効に成立となります。

そして多くの議案は普通決議により承認されていきます。
普通決議の承認要件は、総会参加者の過半数です。組合員総数の過半数ではありません。
ここは重要なポイントです。
仮に100戸のマンションで組合員が100ならば、実出席+委任状提出者+書面行使者の3つを合わせて50あれば定足数を満たしますので、総会は有効に開催された、となります。
そして議案は参加者の過半数ですから、上記の例の場合(50参加)は26の賛成で承認となります。組合員数の過半数(上記例の場合51)じゃありません。
“100に対して最小の場合は26で承認じゃぁ、あまりに少なすぎるだろう”ってことで大英産業さんのサンパークマンションシリーズでは、普通決議であっても総会参加者の過半数ではなくて、組合員総数の過半数って規定しているところもあります。

また、仮に実出席者全員が反対しても、出席していない委任状提出者や書面行使者での賛成者が総会参加者の過半数ならば、その議案は承認ってことになります。
なぜなら、委任状での委任先は多くの場合、理事長や理事となります。
理事長や理事は、“この議案はマンションにとっていい事なので、承認してね”って立場なので委任状=賛成票に直結しちゃいます。
実際に出席している全員が反対なのに、議長は“賛成多数により本議案は承認されました”って宣言しなくちゃならなくなります。
紛糾必至です。

こんな時に、“委任状提出者や書面行使者よりも実出席者の意見を尊重すべきだ”という声が上がります。“委任状提出者などより実出席者の方がこのマンションの事を良くしようと考えている”という意見も付け加えられます。

ご意見はごもっともですが、実出席者のご意見を議事録に記載するなどして尊重することは出来たとしても、それを議決権に反映させることは出来ません。
実出席者の議決権を委任状提出者などの2倍にするなどは区分所有法上認められません。区分所有法では、議決権割合は専有部分の面積に比例するとなっています。
これを標準管理規約では面積差があまりない場合は、同じく1議決権でも構わないとしています。
面積差が1,5倍以上あって、同じく1議決権ならば無効とされるというのが多数説です。
区分所有法の考え方は、議決権割合はあくまで専有部分の面積比率というのが大原則です。

実態に合っていない、と思われる方も多いでしょうが、マンション購入時にそのように記載された管理規約を守ると約束して入居してきているので、仕方ないというのが感想です。