マンション管理士の独り言・・・916

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「強行しちゃいけないよ、大規模修繕工事」

大規模修繕工事に関するご相談が増えてきました。
最近は、市内のみならず福岡市の管理組合さんからのお問い合わせ、ご相談が多くなってきました。
“責任施方式とし、施工業者も決まったけれど、その業者の言いなりのままで施工しちゃうと、高いものにつくかもしれないし、最適な施工方法かどうかもわからない、セカンドオピニオン的なアドバイスしてよ”というご相談も増えています。
また、このことは、“つぶやき主さんというフィルターも入っているので、決して業者の言いなりではないよ”って理事長さんや修繕委員長さんは組合員に対し適正・透明性をアピール出来ることにもつながります。“なるほど”って言う感じです。

ずっと前の標準管理規約には、大規模修繕工事など多額の費用を要する議案については特別決議となっていましたが、最近では普通決議で承認されます。
何度もつぶやいているように普通決議というのは組合員総数の過半数でなくて、総会参加者に対してです。
総会への実出席者+委任状提出者+議決権書面行使者の3つを加えたものが総会参加者となります。
委任状提出者は通常の場合、理事長へ委任します。
理事長は“その議案を承認してね”て立場ですから、ほとんどの場合、委任状=賛成票とカウントされます。
ですから、多額の費用を要する大規模修繕工事の議案であっても、総会が有効に開催されれば、採決するまでもなく承認となっている場合がほとんどです。

しかし大規模修繕工事を実施する際の承認は、普通決議であってもより多くの方の承認が必要です。大規模修繕工事は、そこに組合員が住んでいる状態で行うものですから、住民の協力が何より不可欠です。
おおよそ4か月間は騒音・振動・ホコリが発生するのは勿論ですが、2週間以上もリビングに出られず洗濯物も出せません。足場を組むために車両の移動だって必要です。
協力が得られないまま工事着工し、車を移動してもらえずに足場が組めず、工事が滞ってしまうことさえあります。実際に市内でもこのようなトラブルがあり訴訟まで発展しています。

また、施工業者に対し何かとクレームを付け、工事が度々ストップする事態となり、工事業者から管理組合が損害賠償を訴えられるというケースさえあるのです。

普通決議で承認されたから、あとはスンナリいくだろうと思っていると大やけどします。
工事が始まってからが大変です。工事業者さんは、入居者(組合員)に対して強くは言えませんから、何かあるとすぐに理事長や修繕委員長を頼ってきます。
理事長や修繕委員長が、「注意」と、或いは「お願い」、ついには「懇願」したって上手くいかない事のほうがはるかに多いです。

大規模修繕工事の際は、決して「ごり押し」しないことです。工事が始まってからが大変です。誰が大変かって?
反対者が沢山いるのに、「ごり押し」して普通決議で承認させた、理事長や修繕委員長です。

大規模修繕工事というのは、“総会で工事業者への発注が決まった”で終わりではないのです。そこから工事が始まり、そこには居住者の協力が不可欠で、工事終了後には竣工報告会、更には修繕積立金の値上げまでが残っているのです。
これらが完遂してはじめて大規模修繕工事が終了となるのです。
はじめが大事です。多くの組合員、入居者の理解が得られるよう、努力しなきゃデス。