マンション管理士の独り言・・・949

マンション管理士の独り言・・・949

「災害には強いが脆いマンション」

禅問答のようですが、分譲マンションは災害には強いが、割と脆いのです。
分譲マンションは、大勢の方が住んでいますし、不特定多数の方の出入りがありますので、火事になっても大惨事にならないように建築基準法上の耐火構造物でなければなりません。玄関ドアが共用の専用使用部分となっているのも、勝手に木製ドアなど(延焼してしまう)に変えられないようにしている工夫なのです。
耐火構造物でなければならないので、構造体は鉄筋コンクリート造となっています。
耐震性能も昭和56年以降の建物ならば、震度7の地震が来ても外壁など1部は壊れるかもしれないけれど、中にいる人の生命は安心ですよ、って基準で作られています。
火に強く、地震にも耐えることが出来ます。
更に強風や竜巻に対しても、一部ガラスや、外壁の一部が壊れて飛散するかもしれないけれど、マンションそのものが倒壊するなどは考えられません。
比較すれば一戸建てよりコンクリート造のマンションの方が強いに決まっています。
災害時に避難場所に避難するより、マンション内にとどまっていた方が安全というのも頷けます。
分譲マンションは、災害には強いのです。

しかし、分譲マンションは脆いのです。台風や地震、火事などの災害そのものには強さを発揮しますが、2次災害である特に停電にはからっきし弱いのです。
最近の分譲マンションは、エレベーターも数基あり、オートロックシステムと至れり尽くせりの設備が設置されています。
それだけに、停電には脆弱なのです。
停電時エレベーターは停止します。P波S波など地震波感知機能が付いている最近機種ならば、地震時には停止し、その後非常用バッテリーに切り替わり、最寄階へ着床します。
着床したら、ドアが開きっぱなしになって動作が終了します。
病院などに備え付けられている自家発電機の様に、非常用バッテリーが停電している間ずっ~とカバーしてくれて動いてくれる、なんてことはないのです。
階と階の間で停止したカゴを最寄階に着床するだけのための非常用バッテリーなのです。
閉じ込め事故防止のためだけにある、というものです。
地震波感知となっていないエレベーターでは、残念ながら地震直後に停止してしまいます。閉じ込められちゃいます。カゴ内の非常用ボタンをひたすら押し続けるしかありません。
オートロックシステムは言うまでもなく、停電と同時にダウンとなります。

給水だってストップしちゃいます。直結増圧や貯水槽方式、高置水槽方式に係わらず高い階へ給水するためにポンプが設置されています。このポンプが停止してしまうからです。
直結増圧給水方式では、もとからの水圧で3階くらいまでは水がチョロチョロと出ます。受水槽・高置水槽方式ならば、受水槽などに貯まっている水でしばらくの間命を繋ぐことも出来るようです。
管理人室や清掃のための水栓では、ポンプを通さず配管している場合もありますので、事前に調べておかなきゃ、です。

北海道地震に伴う大規模な停電では、高層階に住むマンション住民が自分の部屋は全く被害がないのに、エレベーターが止まり、給水車まで水を汲み行く作業が大変すぎて避難所に身を寄せたという事案が何件も報告されています。

管理組合としてまずは、停電時にエレベーターや給水などの設備はどのような状態となるかを調べ、組合員へそのことを知ってもらうことから始めなければなりません。
つぶやき主はお世話している管理組合さんにそのマンション独自の防災・減災マニュアルの作成に取りかかっています。

福岡市では昨年分譲マンションの防災・減災マニュアルを作成しました。北九州市は遅れています。
せめてつぶやき主関与のマンションには、独自の防災・減災マニュアルを作って福岡市を追い越しちゃる、という意気込みです。