マンション管理士の独り言・・・972

マンション管理士の独り言・・・972

「鍵をなくした」

年度変わりで理事長が交代した折に、書類や共用部鍵の引継ぎが行われます。
集会室や管理事務室があるマンションならば、引継ぎ書類や鍵は集会室などの書庫に保管されます。
それらがないマンションでは、理事長が自宅で保管しなくてはなりません。
竣工後何年も経過した管理組合では引継ぎ書類も山の様になります。

木曜日は週に一度の掃除の日です。
いつものように掃除の女性が預かっている鍵でエントランスを開け入館し、掃除用具の入っている階段下倉庫を開けようとしましたが、開きません。
何度シリンダーに鍵を差し込んでも開きません。
その掃除の女性の勤め先からつぶやき主で電話です。
「倉庫の鍵が開きませんが、シリンダーを取り替えました?」
「取り換えていませんよ。」
「何度やっても開かないそうです。おそらくシリンダーに砂か何かが噛んで、開けずらくなっているのでしょう。」
「仕方ないですね。今日は掃除なしで帰られてください。後日その分を穴埋めで掃除してもらいます。それまでに鍵は解錠できるようにしておきます」

という会話の後、副理事長から連絡がありました。
“昨夜、倉庫の鍵を交換しました”。“えっ、何で!”です。
何でも先日、町内会で掃除をしようと倉庫の鍵を理事長へ借りにいったのですが、理事長から「失くしたみたい」と言われたみたいで、その後探したけれどやっぱり見つからない。となったそうで、仕方ないから昨夜鍵を取り替えたとのことです。
“これじゃ、開くわけないじゃん”です。

鍵の交換費用が2万円弱です。この費用をだれが負担するのかで理事の見解が分かれました。“理事長が失くしたのだから理事長に負担してもらうべき”というご意見に対し“わざと失くしたのじゃないのに、交換費用を負担させれば今後理事長になる人が責任が重いという事で今以上に理事長のなり手がいなくなる”というご意見とが対立します。
“こういう場合には、その費用負担をどうするなんて取り決めないから、理事会で話し合って決めるしかないでしょう”というのがつぶやき主の意見です。

ですがこれで話は終わりではありません。
失くした鍵でエントランスも開けられるので、拾った人がマンションに入館することが出来るのです。
まさか、マンションの鍵とはわかるまい、とは思いますが絶対とは言い切れません。

ウッカリ自分宅の鍵を失くしちゃったら、拾った人はその家は勿論エントランスを解錠しマンション内に立ち入ることが出来ちゃいます。
自分宅については鍵を交換すればいいのですが、エントランスまで解錠できるから厄介です。他のマンションでは、鍵を失くしたことで、玄関エントランスのシリンダーを取り換え、各戸に3本ずつ鍵を配ったという事例もあっています。
交換費用を誰が負担したのかまでは知りませんが、多額の出費です。

このような場合に備えて、「鍵を紛失した場合には、その該当する部分の鍵の取り換えのみを行い、他の部分の取り換えは行わないことを組合員は承認する」と規約で定めている管理組合もあります。
多くの管理会社さんもそのように運用しています。

いろんなことがある年の瀬です。