マンション管理士の独り言・・・983

マンション管理士の独り言・・・983

「免震装置改ざん、KYB事件のその後」

免震ダンパー装置製造で日本のトップメーカーであるKYB社によるデーター改ざん事件のその後はどうなったのでしょう?
対象となる986物件のうちまだ15%程度の建物しか公表されていません。
北九州市ではウェル戸畑のみです。
全国的に見ても分譲マンションでの建物名公表はまだ1件もないようです。
公表すると資産価値の低下を招く恐れがある、ということの様で、所有者の承諾あるときに限って公表するというスタンスのようです。
この言い訳はおかしい、です。おかしい、というより“手続き的に承諾何て得られるわけない”という事を前提にしているような気がします。

KYBさんは分譲マンションにおいて所有者の承諾というのは何を指し、どのような手続きを踏んだものの事を指しているのでしょう?
総会で普通決議により承認を得ることを指しているのでしょうか?
しかし総会で承認を得るためには理事会で議案化し、さらに総会の2週間前までに議案書を組合員(=区分所有者)へ配布することが必要です。
総会では予め配布された議案書に書いてあることしか、決議できません。
総会当日になっていきなり理事長さんが、“実は当マンションの免震ダンパーはKYB製なんです。これを公表するかどうか皆で話し合いましょう”なんて出来ません。
理事会で審議し、議案書を組合員全員へ配布した時点で、もう公表したも同然です。
いくら総会で、「当マンションにおいてKYB製のダンパーを使用していることを公表することについて」を議案化し、「公表しない」となったとしても、議案書に記載してしまっているので、公表してしまったのと同じです。
多くの方の口を塞ぐことなんて出来っこありません。

賃貸マンションならば、オーナーに相談してオーナーの判断を仰げばいいのですが、分譲マンションの場合にはそうはいきません。
理事会で検討⇒議案化⇒議案書配布⇒総会開催⇒総会で承認、という手続きが必要です。
理事長さんが勝手に決めてしまう、なんてのは出来ません。

また、仮に議案化して総会で検討することになれば、大紛糾するのが目に見えています。
“公表してキチンとした対応をKYBに求める派”と“そんなことすると資産価値の低下を招きかねないし、補修工事何て簡単にできるものじゃないから公表しない派”に分かれてしまうことが容易に想像できます。

それでも公表~補修となれば引っ越しを伴う大工事になることが目に見えています。施工側との窓口は管理組合とならざるを得ません。こんな降って涌いたような事件のせいで管理組合や組合員さらには管理会社にとっては迷惑な話です。

「議案化すれば公表と同じになってしまうので、議案化して総会で審議何てするわけない」「補修となったら大変なのにそれを分かって補修を求めてくる管理組合なんてあるわけない」と高を括っているのでしょう。

北九州では、ポレスターリーモ、ネクスタージュ高見七条弐番館、大和DCタワー、更に現在建築中の積水ハウス小倉ガーデンシティが免震もしくは制震工法のマンションです。これら管理組合には今のところ全く動きがないようです。
管理組合に動きがないのは頷けますが、売主デベにも更には管理会社にも動きがないのはいただけません。
設計会社や、更には施工ゼネコンさんに聞けばすぐにわかるでしょうに・・・。

対策や方針はそれからです。