マンション管理士の独り言・・・992

マンション管理士の独り言・・・992

「あまり下請けさんをイジメちゃ、いけないよ」

新築間もないマンションで、1度も住まないまま売り出される物件があります。
「折角気に入って購入したはずなのに、何で1度も住まないまま売りに出すのかな?転勤が急遽決まったのかな?お気の毒だな」なんて考えるのでしょうが、多くの場合真実は別にあります。
稀に、「急遽転勤が決まった」なんてこともないわけではないでしょうが、多くは施工会社などの下請けさんが売主さんに言われて購入させられた、というパターンです。

1つでも売れていない住戸があれば、チラシも打たなきゃいけないし、営業マンも付けなきゃいけません。完売でないのでプロジェクトとして蓋が締まりません。
売れていない住戸の管理費や積立金だって負担しなきゃなりません。
稀に「管理に関する承認書」で未販売住戸の管理費や積立金を売主は負担しない、って堂々と宣言してるアコギな売主さんもありますが・・・。

また、2期分譲や同じ商圏で別のプロジェクトを企画しているならば、早く売ってしまわないと共倒れになってしまいます。
売れ残った住戸と新規売り出しの2期分譲などとの間で社内競合しちゃうからです。
その結果、売れ残った住戸は、ますます売れなくなってしまいます。
売れ残った住戸と新規発売住戸あれば、誰だって新規物件を購入します。
さらに売れ残り住戸は新規物件の販売にいい影響を与えません。
「この商圏では、1期分譲は早期に完売しました。お待ちかねの2期分譲です。」って雰囲気を醸し出さなきゃ、です。

そこで残り僅かの段階で、施工ゼネコンやサブゼネコンさん、土地家屋調査士、司法書士さん等このプロジェクトに関係している業者さん(下請けさん)に購入してもらうのです。
それらの業者さんも仕事をもらっているので、“断りたいけど断れない”って感じで渋々受けちゃいます。
反対に、“必ず1戸は購入するからこのプロジェクトの仕事を下さい”って売り込みがあったりします。
“購入したはいいけど、住むつもりはない。持っていれば固定資産税のほか管理費だって払わなきゃならない。早く売ってしまおう”という物件が完売後1年程度で市場に「新築未入居」という状態で売りに出されます。

残り物件をあまり業者さんへ押し付けちゃうと、業界内でそんな風評が流れ、“あそこの○○会社は、売れ残り物件を買わせるから、請け負わない方がいいよ”あるいは、“買わされることを予定してその分を請負額に予め上乗せしておかなきゃ”なんてことになります。
請負額が上がるという事は、建築費が上がるという事なので、その上がった分は、確実に販売価格に反映されます。
これらはおそらく独禁法の「優位的立場を利用しての取引」に抵該当する行為だと思いますが、業界では悪しき慣行としてまだ続いています。

「あまり下請けさんをイジメちゃ、いけないよ」です。

“偉そうに言うけど、つぶやき主さんは販売センター長だった時に下請けさんに買わせなかったのか?”何て言われれば返す言葉が見つかりません。