マンション管理士の独り言…449

「受任者の悩み」

先日管理組合の理事長さんがご相談に来られました。
7月末に総会が開催されるらしいのですが、その管理組合では理事長さんが議長を務めることになっています。
そして総会開催日の1週間前までに議案書を組合員へ配りますが、その議案書は理事長さん曰くいつも“淡白なもの”らしいです。
「第1号議案 決算案について」だけとしか記載されておらず、その議案の内容についてはいつも何にも触れられていないとのことです。
配布された議案書を見てもその議案の詳しい内容は全く分からないようです。

そしてその状態で、委任状が提出されます。
委任状には、「受任者の記入がないときは理事長に委任したものとみなす」とされています。理事長と言うのはその議案の提出者ですから、常識的に考えればその議案に賛成します。“自分は反対だけど議案として提出する”なんていうのは基本的にはNO,GOODです。
従って「理事長に委任」ということはその議案について賛成者が増えるという事に結びついていきます。

ここでこのお年を召された理事長さんが悩みます。
“総会は定足数にも達し、適法に開催された。実出席者は10名だった。自分は委任状を15名分預かっている。こんな状態でもし実出席者10名全員がその議案に反対したとしても、自分一人が賛成すれば、委任状と合わせて16名が賛成することになりその議案は承認されちゃう、こんなことで良いの?そんな状態でも自分は賛成しなきゃならないの?議決権を行使しなきゃなんないの?そんな悪者になりたくないよ。”です。

しかし法律的にはその委任状も有効です。
委任者が本当に考えた挙句に理事長に委任したのか、あるいは全然何も考えなくて理事長に委任したのかなどには関係なく、どんな考えに基づくものであってもその委任状は有効です。
よ~く考えた人も、全く考えていませ~ンという人であっても、考える考えないはその人の自由ですし、委任状の有効性に濃淡があるわけじゃありません。
ですからこの理事長さんのご相談に対しては、“委任状は有効ですから、仮に実出席者全員が反対であっても賛成と言う意思表示をし、粛々と承認していくしかないでしょう”となります。

だけどそのような状態になる総会ならば、もっと前に、“議案書を配布する前にやる事あるでしょ”です。
もっと理事会で良く揉んで、議案書は受け取った組合員がその議案の内容が理解できるように工夫すべきですし、委任状だって、「受任者の名前がないときは棄権とみなす」でもいいでしょうし、議決権行使書を添付する方法だってあります。

このようなことは実際の管理の現場では、よく見かける光景です。
実出席者が何人いようと、その人たちが全員反対したって、総会開催と同時に理事長さんへの委任状で、もうその議案は承認されちゃってる、総会開催と同時にもうその議案の承認は決まっちゃってる。って具合です。
進行上いちおう“それでは賛成の方は挙手願います”なんて言いますが、挙手する前から承認されちゃってる、って感じです。

つぶやき主は議案書に「これでもか」というくらい詳細にコメントを付けますから、これを読んでもらえればその議案の内容は理解してもらえてるはずですが、ほとんど議案の内容がわからない議案書で理事長一任何てことをやってると、スラム化までまっしぐらですよ