マンション管理士の独り言…589

「死んだら、どうなる」

丹波哲郎さん監督の映画にこんな題名のがありましたが、前回に引き続き連絡先がないままマンション区分所有者がお亡くなりになったらどうなるかについて、もう少し掘り下げてみます。

連絡先がわかれば、その方(多くの場合法定相続人)が遺体の引き取りや葬儀を執り行い、遺産分割について取り仕切ってくれるのですが、その連絡先がない場合は管理組合は大変です。
管理組合は、亡くなられた区分所有者が保有していた専有部分について管理費などの債権を有していますので利害関係人に該当します。
ですから、誰が相続人となって管理費などを負担してくれるのかを把握しておかなければなりません。
誰も申し出なければ利害関係人として自分で探さなくちゃとなります。
戸籍謄本で調べるのですが、総会議事録やら身分証明やらを持って行ってやっと発行してくれますが半日仕事です。
半日も自分の時間を割いて、しかも取り敢えずは自腹を切っての調査となります。

運よく法定代理人が一人でも見つかったとしても、それはそれでまた大変です。
その方に連絡を付けるのも一苦労です。
戸籍謄本にメールアドレスや携帯電話番号何て載っていませんから、連絡を付けるのにも相当なエネルギーが必要です。
やっと連絡がついたとしても、「そんなマンション入らない」って放棄されたら、元の木阿弥になっちゃいます。
ですが実際はこんな作業の繰り返しです。
そして相続人が誰もいないとなったら、裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てます。

選任を申し立てるときには予納金として予め30万円くらい納めておかなければなりません。この予納金は相続財産管理人へのいわば報酬で亡くなった方の財産を処分して返金されますが、“財産何てない”ってなれば返金されません。

そして裁判所は「相続財産管理人が選任されたよ。故人にお金を貸していた人や遺言で財産をもらえることになっている人がいたら申し出てよ」って官報で公示します。
誰も申し出なかったら、さらに6か月かけて例えば内縁関係にあった方などを探します。期間が満了して誰も申し出なかったら始めて相続人不存在が確定します。
その後、財産の処分が開始されます。
ざっと10カ月以上はたっぷりかかります。
この間の鍵の保管は相続財産管理人が行いますが、選任されるまでの間は便宜上理事長が保管することが多いようです。

大事なことを忘れてました。
亡くなった方に財産があってそれを処分すれば予納金だって管理費滞納分だって回収できますが、財産がない場合は悲惨です。
でも財産がなさそうだからってほおっておくわけにも行きません。
マンション内に管理費の滞納がたまっていくばかりの空き住戸が残ることになるからです。

何とか相続人には連絡ついたけど「こんなマンションいらない。貸そうにも貸せないだろうし、売ろうにも売れない。持ってれば管理費などを支払わなきゃなんないし、損するばっかジャン」と放棄されても結果は同じです。
相続人に放棄されないような、「貸そうと思えばソコソコの家賃が取れそう。売ってもマアマアの金額で売れそう」ならば引き取ってくれます。
キチンとした管理の行き届いたマンションにしなきゃですよ。