マンション管理士の独り言…764

「目安箱」

組合員の意見を吸い上げよう、開かれた管理組合にしよう、ということで、「ご意見箱」「目安箱」のようなものを設置することがあります。
また、「管理組合や組合活動に対するご意見を伺います」みたいな感じでアンケートを実施する管理組合さんがあります。
一見すると、管理組合活動の透明性を高め、民主的に行おうという風に感じられます。
しかし、アンケートはもろ刃の剣です。
意見を吸い上げようという試みはいいのですが、出てきたアンケートにしっかりと向き合って対応できないと、やぶ蛇になっちゃいます。

無記名のアンケートにはお応えしないというのが原則ですが、キチンと記名の上述べられた意見については何らかの対応をしないと、「意見を書け、っていうから書いたのに、ナシのつぶてジャン」「僕の意見がまったく取り入れられてないじゃん」となってアンケートしたことでかえって悪い感情を抱かせるってこともあるようです。

どんなアンケートでも「その他」項目があって、そこにアンケートの主旨とは違うご意見が寄せられます。
そのご意見を検討するかどうか、取り入れるかどうかは別としても「貴重なご意見ありがとうございました。今後とも管理組合活動にご理解ご協力いただきますようお願いいたします」程度の返答は必要です。

アンケートに寄せられたご意見の公表についても慎重さが求められます。
基本的には寄せられたご意見は意見者の名前は伏せて全て公表しますが、名前は伏せていても“誰がどこからどう見てもあの人ジャン”とわかる場合があります。
その意見が建設的ならば良いのですが、クレームもどきのご意見だった場合は、理事会は取り扱いに苦慮します。
「ご意見者がすぐに特定出来そうだし、意見内容は管理組合に対して不満タラタラだし、公表するのは止めようか」というご意見が出されます。
しかし、公表するのか、しないのかを理事会が決めるのもいかがなものか、です。
悪くとらえれば、理事会が検閲機関になってしまいます。
「理事会に都合のいい意見ばかり公表して、都合悪いのは公表してないんじゃネ~」です。

また、ご意見者からは「この人のご意見は公表したのに、なんで私のは公表しなかったの?」
なんて言われかねません。
その結果、一つでも公表するのが不味いって思われるご意見があった場合には、全てのご意見を公表しないとなってしまいます。
それはそれで、「何で公表しないの?」って言われちゃいますので、難儀な問題です。

では「アンケート時にすべてのアンケートは公表しますので、そのおつもりでご意見願います」なんてやると「自由意見の抹殺だ。」「言いたいことを言えなくしているジャン」と勘繰る方も出てきます。
比較的ベターな方法は、「基本的にすべてのご意見は公表します。公表に差し支えある場合は、公表不可とご記入ください」でしょうか。

難しいです。
マンションは一番小さな民主主義らしいです。
「目安箱」設置さえままならないのに・・・。