マンション管理士の独り言…765

「大判タイル」

豪華な雰囲気を出すために玄関エントランス廻りに大判タイルを貼っているマンションを見かけるようになりました。
サイズは30㎝×60㎝で厚さ5mm、自重もかなりのものです。
通常このような大判タイルを貼るときには、外壁コンクリート面にフックのような金物を取り付け、さらに接着剤と併用します。
大判タイルですから剥落、落下したら大事故にもなり兼ねませんので、慎重の上にも慎重な取り付け方法を採用します。

この大判タイルの落下事故が市内数カ所であっています。
取り付け方法は、金具を使わず、こぶし大の接着剤4カ所で貼りつけるというものです。
この取付工法は一般的にGL工法といわれるもので、外壁に面した室内側石膏ボードを取り付ける際に採用するものです。
「GL工法を外壁面でしかも大判タイルに使うかな?これじゃ、落ちるわな」って思っています。

仮に落ちなくても築後12年~15年の大規模修繕工事時が心配です。
劣化診断の結果、大判タイルが浮いていることが判明してもこれといった補修方法が見当たらないのです。
通常の5㎝×20㎝程度のタイルならば、タイルとタイルの間の目地が浅目地(貼っているタイルを真正面から見てタイルとタイルの間のセメント埋めの部分が浅い=目地がタイル表面まである)の場合は、言わばタイルとタイルががっちりとスクラム組んでいる状態なので、タイル目地部分に接着剤を充填するパターン打ちでも対応できます。
深目地(目地がタイル表面までなく、正面から見ると目地は奥の方にある)の場合は、タイル1枚1枚が独立して貼りつけられている状態なので、目地部分に接着剤を充填しても効果がなく、この場合はタイルの中央部に直接ピンを打ち込む(脳天打ち)補修方法となります。

大判タイルで、金具を使っておらず、しかもGL4点接着工法の場合は、こぶし大の接着剤の高さが5㎝程度あり、この間に接着剤を充填するのは不可能ですし、5㎝も外壁面から離れているタイルに直にピンニングなんて出来ません。
ピンニングの途中で間違いなくタイルが割れちゃいます。
貼り変えしか対処方法が思いつきません。
貼り変えの場合は、どんなに色合わせをしてもチグハグな感じになります。
残念ながらこの貼りつけ工法のマンションが市内のアチコチにあります。
新築マンションほど多いのが厄介です。
しかもご丁寧に梁底にも貼りこんでいます。
梁底なのでもし剥落~落下したら運悪くたまたまそこを通っていた人の頭を直撃です。

大判タイルは一旦貼るとこれといった補修方法が見つからないので、半永久的に剥落することのないような工法としてくれなきゃ、管理組合さんは困ってしまいます。

「エントランス廻りの大判タイル、剥げなきゃいいな」と思っています。