マンション管理士の独り言・・・1053

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「オプション工事」

新築マンションで竣工前ならば、オプション工事を発注することが出来るようです、最近は。マンションは下の階から出来上がっていきますので、当然ながらオプションで対応できる期間は下の階の方が締め切りが早く、上階になればなるほど対応期間が長くなります。
オプション工事というのは、基本的には標準仕様よりグレードアップしたものでデベさんが予め用意したものです。
費用は「標準仕様のものから○○円アップします」と記載されています。
代表的な例として、キッチン天板を標準ではステンレスエンボス仕上げのものをオプションとして人造大理石に変更できます。その際の費用は5万円です、みたいなものです。
これに対し、変更工事というものは、デベさんが予め用意していない工事のことで、例えばリビング天井を下げて、ダウンライト仕様にするなどです。
つぶやき主が販売センター長だった時は、変更工事は受け付けていませんでしたし、オプションだって用意していませんでした。
「全住戸分をまとめて発注するので、安価に仕入れることが出来、それがマンション自体の販売価格を抑えることにつながっています。マンションとはそういうものです。注文住宅とは違います。」というトークでした。
ところが最近では、フルオーダーマンションとの触れ込みで“どんな変更工事にも対応しますよ”みたいな(現実には出来るわけない)デベさんも増えています。

一見するといかにも購入者のニーズ・ウォンツに対応しているかのようですが、実際には異なります。クレームの温床です。
つぶやき主は、年間30件近く内覧会に同行しますが、オプション工事や変更工事が購入者との打ち合わせ通りに出来上がっていた事がありません。
“打ち合わせたように仕上がっていない”“この設備は変更したのに、標準のままのものがついてる”などです。
図面さえ揃っておらず、あったとしても確認印もない、図面はあるが最終図面ではない、など呆れるほどのお粗末さです。

原因は、はっきりしています。インテリア担当者(もしくは営業マン)と購入者との打ち合わせ不足です。
オプション工事を実施するには、インテリア担当者は、購入者と打ち合わせしたものを現場に投げかけ、そこでそのご希望は現場で期日までに対応できるかどうかを確認し、出来るとなれば見積や図面を提出してもらい、その後数度の購入者と打ち合わせを経て最終的に決まった仕様を図面に起こし、確認印をもらい、発注書・発注請書の発行、それらが終わって初めて現場へ変更指示~施工となります。
購入者との打ち合わせもそうですが、現場との打ち合わせも数度に及びます。
実際に現場が施工に取り掛かるまでには、これら大変な作業があるうえに、現場からは“工程上○○までに決めてもらわなければ手待ちになる、早く決めてくれ。”と矢のような催促です。

インテリアや建築に関して専門的知識が必要なうえに、とっても短い期間に打ち合わせ~見積提示~確認~現場へ指示を行わなくてはなりません。
注文住宅の場合には、施主はたったの一人なのでインテリア担当者はマンツーマンで対応しますが、マンションの場合は購入者である施主が沢山いることとなります。
しかもどの施主も同じ期間までに決定させなければいけません。
更に専門のインテリア担当者を付けているデベさんはごく少数で、通常は購入者とのオプションの打ち合わせは営業マンが行います。
とても手が回りません。かくして、購入者の希望したオプションが全く違った形で出来上がり内覧会で大モメにモメます。

厳しく言えば、出来ないことはやるな!やるなら体制を整えろ!です。
次回はもっと優しく、ではどうすればいいのか?についてです。