マンション管理士の独り言・・・1054

マンション管理士の独り言・・・1054

「オプション工事・・・その2」

今はどのデべさんでもオプション工事や設計変更工事を受け付けるようです。
受け付けるというとイヤイヤ感がありますが、そうでなくて“積極的に受け付けます、それが当社の強みです”みたいに売り物にしているデベさんだって登場しています。
また、“今ならオプションが受け付けられますよ”みたいに早期の販売を狙ってお得感を醸し出しています。
額面通りにその通りの対応が取られ、購入者が期待していた通りに出来上がればこんなに良いことはないのですが、そうはなっていないので購入者をはじめ関係者全員が不幸になっちゃいます。

「購入者の要望は多岐にわたり、それを現場へ間違いなく伝える能力が担当者にない」「仮に能力があったとしても一人が対応する顧客の数が多すぎて、一人の顧客にそんなに時間が割けない」「現場への通達のリミットが短かすぎて図面にまで落とし込んだ正確な注文が現場に伝わっていない」「現場の監督も図面書きに追われて下請け任せになっている」「デベさんの要望で必ず3月(あるいは9月)までに竣工させなければならないので、手待ちの時間などなく工事はどんどん進めなければならない」などの結果、購入者の正確な要望が現場へ伝わらないまま工事が進んでいき、内覧会で“要望していたのと違うじゃん”と大きなクレームと発展します。

“ゴメンナサイね。違っていたけど、これで勘弁して。この状態で引き渡しさせて”で収まるわけがありません。
この際現場担当者が必ず言うのが、出来上がった時が一番いい状態で、手直しすればそれだけ施工精度が落ちちゃいます。何とかこれで引き渡しをお願いできませんか“です。
売主サイドの不手際で要望通りに出来ていないという不利益を何で顧客が被らなければいけないのでしょう。
“希望していた通りにやり変えろ!”となります。必ずそうなります。

少しの手直しで収まればいいのですが、中には折角作った壁を取り壊し、一からやり直しって住戸も出てきます。壁までやり変えなければならない、となればオプション利益なんてすっ飛んじゃいます。
引っ越しの日程が延び延びになります。“延びた間の管理費や修繕積立金は払わないよ”“今借りてる家を何時迄に引っ越すと大家に言っている、どうすんの?”“引っ越しが新学期に間に合わないじゃん”などいろんな方面にまで影響が波及します。
そして手直しが終わっても、顧客の不信感は収まりません。

デベさんは顧客満足のためにオプション工事を取り入れているのでしょうが、実際にはそのような結果になっていません。クレームの温床みたいになっています。
これを解決するには、あれもこれもオプションは用意しない、発注できるリミットは厳守、オプション受付専任スタッフを十分に揃える、当然それなりの費用が発生するがそれは発注者(=顧客)が負担する、基本的にオプションのみとし設計変更は受け付けない、くらいが考えられます。

オプション工事は高くつきます。顧客は売主サイド(現場を含む)から出された金額を受け入れるしかありません。他の業者から相見積もりを取るなんてことは出来ません。言いなりの金額で発注です。
現場は、安く請け負った分をオプションで取り返そうという思惑があり、売主も多くのオプションメニューがあれば「売り」につながります。
“少々高くついたけど、自分の要望を取り入れることが出来た。良いマンションを購入できた”となれば関係者全員にとってこんなに良いことはないのです。
購入者・デベさん含めンションに関わる皆がそれを願っていますが、そうなっていない現状が悲劇です。