マンション管理士の独り言・・・1141

マンション管理士の独り言・・・1141

 

「大規模修繕工事」

 

大規模修繕工事のコーディネーターやっています。

共通仕様書を作成し、見積もりに参加される業者さんを、それぞれ別の時間を設定し、見積もり要領のご説明です。

参加業者さんを一堂に会してもらえば、一度の手間で済むのですが、狭い業界ですから、「今回はウチが受注したいので、アンタんとこは引いてよ。前回はアンタんとこに取らせてやったじゃん」と机の下で手を結ぶのを防ぐためです。

 

見積もり要領を説明する中で、一番の老舗業者さんから、「今回は危険回避修繕ですね」と言われました。

その業者さん曰く、大規模修繕工事にも「建物維持保全修繕」と「危険回避修繕」の2種類があるそうです。

「建物維持保全修繕」は、その建物の資産的価値を保全したり、より長く快適な住まいを確保するための修繕工事です。国交省などがイメージしているのはこのタイプです。

もっと簡単に言えば、建物を竣工当時の状態に戻す修繕です。

これに対し「危機回避修繕」の方は、ほおっておくと建物の損傷が酷くなったり、場合によれば住んでいる人や通りがかった人に害を及ぼす危険のある部位の補修を行う工事です。

分かりやすいのがタイル補修です。剥落の恐れのあるタイルは何をさておき、真っ先に補修しなければなりません。

“17年前に実施したあるマンションではタイルを全部剥ぎ取り、張り替えたこともある”とのことでした。

そのマンションではタイル補修の他に、屋上防水・外壁塗装補修・シーリング打ち換え工事・バルコニー防滑シート張替工事なども行う予定だったのですが、タイル全面張替でお金がかかってしまい、それ以外は何の工事も実施できなかったそうです。

 

タイル張替に要する費用は、見積もり時にはわかりません。

業者さんには、全体のタイル枚数のおおよそ何%くらいの張替が必要なのでは?という推測で金額を出してもらいます。

しかし、実際に足場を組んだ後に打診してマーキング検査をすると、予定より大幅に張替枚数が増えることがあります。

更に「共浮き」があります。マーキング検査の時には健全だったものが、隣のタイルを剥ぎ取る際の振動で、浮いてしまうという現象です。これは必ず生じます。

カッターで切り込みを入れてなるべく隣の健全タイルに影響を及ぼさないように慎重に工事を行っても必ず数%は発生します。

この「共浮き」に対しては、追加工事として工事完了後に清算しなければなりません。

 

足場を組んだら先ずは打診してマーキング検査を実施します。そこでタイルの張替枚数やピンニング枚数を確定しないと、大枠の予算が掴めません。

屋上防水工事や各種塗装工事、バルコニー内の防滑シート張替工事などを予定していても、タイル工事に実際どれくらいの費用かが掴めるまで、これら工事はストップです。

場合によれば、実施できない工事も出てきます。

 

最近は、この「危険回避修繕」ばかりだそうです。

前述のタイル全部張替マンションもそうですが、マンション購入者には何の責任もありません。そんなデタラメな工事をした建設会社、それを見過ごした設計会社、そして何といっても売主が一番悪いのです。

購入者も専有部分だけでなく、共用部分の施工精度にももっと関心を持たなきゃです。

 

明日からランドマーク黒崎さんやライブスクウェア大手町さんの内覧会同行です。共用部分が見たいな、と・・・。