マンション管理士の独り言・・・980

マンション管理士の独り言・・・980

「管理に関する承認書」

新築マンション購入者が、いつからその住戸の所有者になるかというと、鍵の引き渡しを受けたときからです。
鍵の引き渡しを受けるには、購入住戸の残金を支払わなければなりません。
この時、登記費用や修繕積立基金や固定資産税の清算金など諸経費と言われるものも一緒に振り込むのが一般的です。
マンションという高価な買い物であっても、買主が代金全額を支払ったと同時にその物の引き渡しを受ける(これを同時履行といいます)ということであって、要するにふつ~の商取引と同じです。

引き渡しを受けるまでは誰のものかというと、施工したゼネコンさんのものです。
その後ゼネコンさんから売主デベさんが引き渡しを受け、更に購入者へと引き渡されます。売主デベさんは、午前中にゼネコンさんから引き渡しを受け、その日の午後から購入者へ引き渡すという手法を取ります。少しでも危険負担を軽減するためです。
引き渡しが1戸でも済めば、管理組合が設立となります。
1戸引き渡しが済むと、売主デベさんともう一人とで区分所有者が複数人になりますので、その時点で管理組合設立です。

管理組合設立と言っても、まだ理事長はじめとする理事が決まっていません。
理事長さんが決まっていないので共用部の維持メンテナンスを実施する管理会社さんとの間で管理委託契約が締結できません。
しかし管理委託契約が締結できていなくたってエレベーターや給水ポンプなどの設備は稼働させなきゃいけませんし、共用部分の清掃だって行わなくてはなりません。
そこで管理組合設立総会までの間は売主の社長さんかもしくは管理会社さんが理事長代行となります。
要するに管理組合設立総会までの間は、管理会社さん他が理事長代行を行いますよ、ってことです。
このことが、「管理に関する承認書」に記載されていて、引き渡し時にマンション購入者全員から署名捺印をもらいます。

管理組合設立総会までの間のみの理事長代行ですから、例えば共用部の損害保険などもこの間だけのものが付保されます。
そして設立総会時に、「○○損害保険で△年の保険期間、□□□の保険料で共用部に損害保険を付保することについて承認願います」という議案が出され承認を求められます。

また、「管理に関する承認書」では売主サイドで作成した管理規約(案)や使用細則(案)について承認を求めています。
購入者全員が「管理に関する承認書」に署名捺印を行えば管理規約(案)から(案)がとれて、晴れて管理規約として発効するという流れとなります。

もうひとつ、「管理に関する承認書」には未販売住戸あるときの管理費・修繕積立金の取り扱いについても書かれています。
未販売住戸あるときは、売主がそれを負担する、或いは売主は負担しない、って書いているものもあります。
負担しないって書いてても、購入者が「管理に関する承認書」に署名捺印すれば、購入者は“それでいいよ”ってことになりますので、法律的に有効です。

引き渡し時に署名捺印を求められる「管理に関する承認書」はペラペラの1枚の紙っ切れですが、とても重要なものです。