マンション管理士の独り言・・・420

「もう一言だけ言わせて・・・やっぱりエレベーター」

しつこいようですけど、今回もエレベーターについてつぶやきます。
大体25年くらいでエレベーターはリニューアル工事を行います。
リニューアルと聞くと、何だか全部総取っ換えみたいなイメージですが、エレベーターの場合のリニューアルというのは、主に巻き上げ機・モーター・制御盤の取り換えを指します。
カゴはそのままですが、制御盤が取り換えられるのでカゴ内の操作盤も新しくなります。最近のタイプは屋上にエレベーター機械室がいらない、いわゆるマシンルームレスが主流ですので、機械室もいらなくなっちゃいます。
巻き上げ機はカゴ本体の裏側にくっついていますので、昇降路に少し余裕がなけりゃいけません。
そしてこのリニューアル工事では、確認申請なんかも不要です。
工事費用も7~800万円ってところです。
しかし、取り換える巻き上げ機やモーター、制御盤以外の部品は今あるものを使いますので、嫌でも今のエレベーターメーカーを引き続き採用するってことになっちゃいます。
メーカー同士で部品の互換性はないし、AメーカーがBメーカーに自社の部品を提供するってことは聞いたことがありません。

その結果リニューアル工事の場合、今までがA社のエレベーターならば見積もりを提出するのもA社だけになってしまいます。
B社やC社は見積もりにすら参加しないでしょう。
参加したってA社と異なりそれ以外の部品まで交換する必要がありますし、その結果金額が嵩み、そんな高い金額で受注できるはずがないから見積もりなんてしません。

これに対し、今あるエレベーターを撤去し、総入れ替え、となれば話は違ってきます。
B社C社にも受注の見込みが出てきますので、俄然やる気が出てきます。
しかし、総入れ替えの場合には確認申請が必要になります。
また、地震時にエレベーターを支えるだけの耐力が構造躯体にあるかどうかの構造計算まで求められることがあります。
そして、総入れ替えの場合の費用は2~3000万円。
工期は2か月以上。エレベーターが2基あれば、1基ずつ工事することで何とかまかなえるでしょうが、1基しかない場合2か月以上もエレベーターなしの生活を入居者に強いることになります。
そもそも2~3000万円もかけてエレベーター総入れ替えを実施するでしょうか?
賃貸ビルのようなワンオーナーならば、オーナーの一声で総入れ替えも出来るのでしょうが、分譲マンションでは総会を開催して組合員の同意が必要です。
「それよりも前に外壁タイルの剥落防止をやってよ」「防水工事の方が優先だよ」「水道を直結増圧に変更しよう」なんて意見に押しつぶされるのが関の山です。

かくして分譲マンションの場合、エレベーターはリニューアル工事が主流となり、住民の意思で決まったわけでもなく、入居時から売主や施工会社の都合でついていたエレベーター会社と永~いお付き合いをすることとなります。