マンション管理士の独り言・・・1057

マンション管理士の独り言・・・1057

「それは、やりすぎ」

平成以降に分譲された市内マンションの全てが委託管理です。もっと詳しく言えば全部委託管理です。
分譲マンションの場合、205号室とか408号室とかいう具合に専有部分と柱・梁・外壁・廊下階段・エレベーター設備などのように共用部分とがあります。
共用部分に関しては、マンションを購入した人の共有物となり、同時にその維持管理に関しては購入者が行わなくてはなりません。
維持管理はマンション購入者が行うわけですが、初めてマンションに住まう方がほとんどの言うなれば“素人集団”に専門的知識が必要な管理は行えません。
餅は餅屋です。管理に関しては、“管理会社にお任せ”という管理形態が委託管理です。

管理形式には委託管理ともう一つ自主管理というのがあります。
文字通り、共用部分に関しての維持管理はそのマンション購入者全員で行おうというものです。
全国のマンションの92%が委託管理となっていて、自主管理は最近ではあまり見かけない管理方式です。
自主管理は、具体的に言うと、廊下階段などの掃除は自分たちで行う、管理費・修繕積立金の収納も自分たちで行う、エレベーター点検などは業者が行うが検査立ち合いなどは自分たちで行う、理事会・総会の手続き書類整備は自分たちで行う等、と業者に依頼しなければ出来ないもの以外は自分たちで行うというものです。
委託管理と比べて、業者に依頼しないので、その分管理費が安くあがるというのが最大のメリットですが、それ以外にも住民の管理に対する関心が深まるというメリットも見られます。
デメリットは、何もかも自分たちでやらなければならないので大変、役員に就任したらやることが沢山ある、人によって能力・時間的制約が異なるので業務の出来栄えが違ってくるなどが挙げられます。

市内マンションは分譲時に、売主の子会社や関係会社である管理会社のために管理費だけはキチンと高額に設定していますが、修繕積立金に関しては意図的に低く抑える傾向にあります。
ローンの支払い+管理費・修繕積立金+駐車場料金を少しでも低く見せかけるために修繕積立金を低く抑えています。
修繕積立金の算出根拠となる長期修繕計画も杜撰なものりばかりです。
キチンとした長期修繕計画を立案すると“これじゃ、不足するじゃん”となる場合がほとんどです。
そして“余分な管理を見直そう、経費削減しよう”ってなるのが自然な流れです。

ところが、管理費を抑えるためにエレベーターメンテを独立系に変えたり、何でも自分たちでできるものは自分たちで行おう、って半ば自主管理方式へベクトルを向ける管理組合さんがあります。
方針としては間違っていませんが、これは無理です。やりすぎです。
合意形成したつもりでも、必ず後日クレームとなります。
「このマンション買ったのは委託管理だから購入したんだ。お金がかかっても委託管理の方がいい」と言い出す人が大勢出てきます。
そして、管理組合のためを思って“余分な管理を見直そう、経費削減しよう”とした人たちが「余計なこと、つまらないことを言い出した犯人」扱いされるのを何度見てきたことか・・・。

マンション購入時に決まっていたことを変更するのは、とても大変です。廊下の照明器具の点灯時間を変えるのさえ大変なエネルギーが必要です。
出来ることと出来ないこと、やれることとやり過ぎないことを判断するには何よりも経験が必要です。
ベクトルが正しいから皆が理解してくれるだろう、っていうのが通用しないのがマンションです。