マンション管理士の独り言・・・1058

マンション管理士の独り言・・・1058

「全戸一斉に・・・ならない」

玄関ドアは、共用の専用使用部分です。専有部分ではありません。
建築基準法によりマンションの玄関ドアは鋼板製と定められています。
もしその住戸で火災が発生しても、鋼板製の玄関ドアなら閉めてさえいれば廊下階段への延焼を防げるという考えからのものです。
専有部分にしちゃうとその人の所有物になってしまうので、“こんな鋼板製の玄関ドアは気に入らない。木製の高級ドアに変えちゃう”って言われたときに、“それはダメだよ”と言えなくなってしまいます。

共用部分なので、その維持管理は管理組合が行うことになります。
大体25年~30年くらいで全戸一斉に取り換えるってパターンが多いようです。
この取り換えは当然ながら総会で承認を得なくてはなりません。
玄関ドアを取り変えたい人は、“玄関ドアはその家の顔ともいえる部分じゃん。煤けてみっともないでしょ”です。お説ごもっとも、です。
ところが、玄関ドア全戸一斉取り換え議案を総会で承認を得ようとすると、必ず反対意見が出されます。
“自分のところの玄関ドアはまだほとんど劣化していない。取り換える必要はない”
“自分はキチンと手入れしているから煤けていない。手入れを怠った住戸に合わせる必要はないのでは”が代表的なところです。これも、ごもっともです。

同じマンションなのに、劣化状況が異なるので厄介です。
同じマンションであっても、風の当たり具合とか、陽の射し方・時間、道路向きなどで大きく異なってきます。角住戸と中住戸とでも大きく異なってきます。
玄関ドアに限りません。面格子やサッシュシーリング、住宅情報盤だって劣化状況は大きく違ってきます。

今回取り換える住戸と、次回取り換える住戸とに分けて実施する、など検討しますが、2回に分けると費用も高くつきますし、新品玄関ドアとお古の玄関ドアが混在してマンションとしての統一感もありません。
また事情を知らない人は、“お古の玄関ドアのままの人からは、お金がないのかしら”なんて思われかねません。

つぶやき主は、「玄関ドア一斉取り換え議案」と「面格子取り換え議案」については、どちらも一回で承認されたことはありません。
一度出して反対意見が多く否決され、その後3年くらいして煤けた玄関ドアが多くなり取り換え派が多数を占めるようになるのを見計らって再度議案提出し、何とか承認されるってパターンです。

壊れるなら一斉に壊れてよ。煤けるなら一斉に煤けてよ、って感じです。

12月14日に日本ハウズイングさんのマンション管理セミナーで講師を務めます。
手前味噌ながら、つぶやき主の話は面白いっすよ。入場無料です。聞きに来てください。