マンション管理士の独り言・・・1213
「管理責任」
民法には3大原則があります。
所有権絶対の法則、権利能力平等の原則と私的自治の原則です。
私的自治の原則(契約自由の原則)からさらに「過失責任の原則」というのが導かれます。
「過失責任の原則」というのは、第3者の身体若しくは財産に損害があった場合に、その損害に対して故意・過失がなければ責任を負わないってことです。
しかし例外があります。
土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負わなければならないと、なっています。
マンションの場合だと、外壁タイルが剥落して通行人や車両に損害があった時には、管理者(=理事長)に責任が及ぶとなります。
理事長は、タイルが剥落しないように、適宜適切にメンテナンスを行っていたとしても責任は免れません。
被害者救済の意味からも過失がなくても責任を負わなければならない、という無過失責任となります。
しかし納得がいきません。
タイル貼り工事を行ったのは、理事長でもないし、組合員でもありません。
売主が工事を請け負わせた建設会社がタイルを貼ったのです。管理組合がその建設会社に発注したわけでもありません。
その工事の不手際でタイルが剥落し、たまたま通りがかった人に損害を与えた。その責任を理事長、つまり管理組合が負わされるのは合点がいきません。
下手くそなタイル貼りを行った業者こそが責任を負うべきです。
外壁メンテナンスを適切に行うといっても限度があります。
毎年足場を組んで全てのタイルの打診検査を行うなど不可能です。
3年に一度の特定建築物定期報告時に手の届く範囲で打診検査を行うのが精一杯です。
外壁タイルの剥落に関しては、アフターサービス期間はせいぜい引き渡し後5年です。
「住宅の品質確保に関する法律」(品確法)では、主要構造部に関しては10年の瑕疵責任を負わなければならない、とされていますが、コンクリートそのものは対象になりますが、タイルは意匠的なものと捉えられており対象外になります。塗装に関しても同様です。
要するに外壁タイルは5年を超えれば剥落しても売主さんや施工会社さんは責任を負わなくていいってことです。
その後は理事長(=管理組合)が責任を負わなければならない、となります。
5年で剥落するタイルって、どうよ、って感じです。
竣工後5年経過したら、タイルが剥落した責任は「無過失責任の原則」から理事長(=管理組合)が負うことになります。
そのために管理組合で共用部保険を付保してるじゃん、って能天気なことをいう人がいます。しかしそれは間違いです。
タイル剥落で被害者がハンディキャップを負ってそれからの人生を送らなければならなくなった時の責任は金銭で代えられるものではありません。
そのことを十分肝に銘じてタイルを貼らなきゃ、です。