マンション管理士の独り言・・・1223
「複合型マンションの悲哀」
先日、足掛け2年に及び検討を重ねてきた管理規約改正がポシャりました。
コロナ禍もあり、組合員が集まる事さえ出来ず、従って折角仕上げた規約改正案の説明会も行えず、とうとう総会に議案上程することできないまま見送りとなりました。
本当は6月末の総会で議案上程することになっていましたが、最後の最後になって1階を占めている店舗部分から泣きが入り、議案上程できずじまいに終わりました。
本件は1階が店舗、2~4階が賃貸、5~10階までが分譲マンションと言う複合型マンションです。
このマンションの管理を行っている大手管理会社さんから、「とても手に負えないのでつぶやき主さんお願い」って紹介案件です。
管理規約を改正するには、最終的には特別決議(議決権総数と区分所有者数のそれぞれ4分の3以上)の承認を得なければならないという、とても高いハードルがあります。
このため管理規約改正のお仕事をお受けする際には、報酬の受け取りについては、着手金と総会での規約改正承認後の成功時に頂戴するという2回に分ける方法をとります。
どんなに良い改正案を作成しても総会で承認されなかったら、成功報酬は受け取れないという仕組みとしています。
今回は我ながら良い出来栄えの規約改正案でした。しかし残念ながら、総会での議案化も果たせず撃沈でした。
お仕事をお受けする際から、大変な案件と言うのはわかっていました。
簡単に考えても、1階店舗の考え方は、損か得か、です。賃貸部もワンオーナーですがこちらも基本的に損か得か、です。要するに商売ですからより利益の大きい方にベクトルが向きます。これに対し分譲マンション部は、今よりも住みやすくなるかどうか、が基本的な考え方です。
また着手してから判明したことですが、賃貸部は区分所有となっていて、今は12戸すべてを1人の方が所有していますが、1戸1戸個別に売却することも可能です。
現行の議決権は、店舗部1票。賃貸部0票。分譲部はそれぞれに1票ずつで計24票。
店舗部は全体の面積比ですれば25%を占めていますが、1票。賃貸部は12戸あり、しかもそれぞれ単独で売却できる区分所有でありながら0票。
管理費負担についても、一部共用部分と言う設定をしていないので、分譲マンション部にしか使われないエレベーターメンテナンス料を店舗部、賃貸部が負担しているようになっていました。
反対に修繕積立金は、管理規約には専有面積に応じて負担と規定されていますが、実際には店舗部も賃貸部も負担していません。
修繕工事が発生する都度、3者の話し合いで負担割合を決めているって状況でした。
店舗部は敷地の余った空間を勝手に「お客様用駐輪場」って看板を掲げているような状況です。要するに管理規約が全く守られていない、好き放題の管理形態となっていました。
ダイナミックに現況を変更させるのは現実的ではないので、負担などが現況と変化しないように、また1部共用部分や、店舗+分譲マンション部の共同管理部分などに細分化し、丁寧に作りこみました。
賃貸部オーナーは東京在住です。メールで頻繁にやり取りを行い改正案で承認いただけるところまで持ってきました。
そして最後の最後に、現状の管理規約のままでも議決権だけ1→25に増える店舗部が、これで十分と言い出しました。それ以外は現行運用通りとしたいということです。
つまり議決権だけ大幅に増やして、修繕積立金は現行通り負担しない、って「良いとこ取り」
がミエミエです。
ごり押ししても店舗部の賛成が見込めなければ議案化しても無意味です。
はっきり言って店舗部はバカなことをしたものです。千載一遇のチャンスを逃しました。
店舗部の顧問弁護士とも話しましたが、マンション管理については素人です。何もわかっていません。後々後悔することでしょう。
それにしても、商売している店舗、賃貸と分譲マンションとが一つ建物となっている複合型マンションはそれぞれの考え方が大きく違うので合意形成がとても難しい、です。