マンション管理士の独り言・・・1397

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「容積率アップ」

6月16日に竹内新市長が、小倉駅と黒崎駅周辺の地域の容積率をアップすることを発表しました。

詳細にいえば、小倉駅と黒崎駅の半径1km圏内の幹線道路沿いの容積率をこれまでの400~600%を最大800%に引き上げるというものです。

ご存じの通り容積率というのは、敷地に対して建てられる建物面積の最大ボリュームを示したものです。

仮に100坪の土地があり、容積率が400%ならば400坪までの建物が建築できるとなります。

これが800%になれば800坪までの建物が建てられることになり、一挙に2倍の大きさの建物が建築できる事になります。

2倍の面積の建物が建築できるようになるということは、2倍の住戸を建築~販売できることになり、それだけ土地の資産価値の向上につながり、売主さんも利益が出るってなります。

大前研一さんは、以前より合理的理由のない容積率は廃止または緩和すべきだというのが持論のようです。

フランクフルト(独)やマンハッタン(米)では建物ボリュームに制限はなく、香港では土地が狭いこともあり一部地域では20mより低い建物は建てられないところもあるようです。

大前さんに限らず容積率の緩和は以前から言われていました。

特にマンションを建て替える場合に、容積率が2倍になれば2倍の住戸を作ることが可能となり、この増床分をデべさんに売却することによりマンション居住者はそれほどの負担なく建て替えが出来るという考え方です。

しかし近隣から反対の大合唱が起こるであろうと尻込みしていました。

それまでは10階建てだったのが、建て替え後は20階になるというのであれば、眺望も阻害されるし、陽が当たらなくなるという反対意見が出ると容易に予想されるからです。

今回の小倉駅黒崎駅周辺の容積率アップに目を落とせば、テナント需要がそれほどあるのかな?というのが率直な感想です。空きテナントばかりにならなければいいのですが。

また交通渋滞も気になります。

さらに店舗や住宅が増えることにより雨水処理が上手くいくのかなという心配もあります。

小倉駅や黒崎駅周辺は雨水処理がいまだに合流式のままです。

合流式というのは店舗や住宅から出る生活排水と雨水とを同じ管路で処理する方法です。

小倉南区など郡部の方は、開発が遅れたので分流式と言って生活排水と雨水とはそれぞれ別の管路で処理されています。当然分流式の方がいいに決まっています。

空から降ってきた雨は生活排水と混ぜず、そのまま川へ流すのが自然ですし何より清潔です。

開発が遅れたので分流式が整った周辺郡部に対し小倉駅や黒崎駅周辺は昭和40年代半ばにかけて開発が進みました。それで相変わらず合流式です。管自体も老朽化が進んでいます。

もし管が破れれば、地盤沈下を引き起こします。

また、合流式では大雨時に一度に雨水が流れ込んで排水処理できず逆流する可能性があります。

北九州市では令和3年に一時間当たり53mmの雨水を処理できるよう整備を進めています。しかし気象庁データでは一時間当たり50mmを超える雨が降る回数は40年前に比べ1,4倍に増えています。 容積率アップし、これまでより背の高い、でかいビルやマンションが出来るのことになりますが、雨水排水だけ見てこれだけ懸念材料があるのにその他の給水、配電などインフラは間に合うのでしょうか?大丈夫なのでしょうか