マンション管理士の独り言・・・1396
「天空率」
かつて道路にへばりつくように建てられた中高層建物は、6階から上の階くらいになると斜めにカットされていたものがほとんどでした。
しかし最近では、道路に近接して建てられたビルやマンションであっても斜めに削られることなくそのままスッと上へと伸びています。
これは2003年(平成15年)から施行された改正建築基準法の効用(影響?)です。
2003年から建築基準法第56条に7項が新設されました。これが「天空率」というものです。
それまでは、あまりに建物がくっつきすぎることのないよう、これを制限するのは“道路”“隣地”“北側”と3種の斜線制限だけでした。
現在でもこれら3種の斜線制限はあるのですが、これらの代わりに「天空率」を採用してもいいよ、となりました。
「天空率」は率なので文字通り数学となり、難しい数式にあてはめなければ算出できません。
建築の専門家ではありませんし、難しい数式を含め算数がやっとのつぶやき主には「天空率」を精緻に説明することは到底できません。
分かりやすく言うと、建物を大きなドームで覆い、測定点から光をその建物に投影させます。
建物分だけドーム内側に影が浮き出てきますが、影が出ない部分を天空と称し、その面積が大きければ大きいほど天空率が高い、ってことになります。
もっと大胆に言うと、測定点に寝転んで建物を見上げた時に“空がどれくらい見えるか”率です。
それまでの3つの斜線制限を守った場合よりも、空が見える割合が大きい場合には斜線制限を無視していいよ、ってことです。
「天空率」の新設によりマンションの建て方が変わってきました。
敷地内に空地を造り出すこと、つまり左右を空けることで余裕を保ち、建物を斜めにカットせず、そのまま上へと伸ばすことが出来るようになったのです。
斜線制限を受けたマンションはデザイン的にも優れているとは言えず、何より斜めの部屋は使いにくく売るのに苦労させられました。
それが矩形の部屋となりスッキリと上に伸びる建物になり、シャープさが際立つお洒落な外観のマンションが増えてきました。
建物が高くなることによる近隣への影響も日影基準はそのまま残すことにより最小限に抑えているようです。
北九州市でも小倉駅・黒崎駅周辺では容積率をアップさせ、“建てられる建物のボリュームを増やすことにより、より有効な都市計画デザインが描ける”“近隣土地の資産価値の向上にもつながる”と舵を切ったようです。
博多天神のビッグバンを模したようで・・・。
しかしこの方針に対し懸念がないわけでもありません。
それは次回・・・。