マンション管理士の独り言・・・1416

マンション管理士の独り言・・・1416

「ここまでやっちゃ、いけないよ」マンション

フーテンの寅さんなら、「それを言っちゃあ、オシマイヨ」です。これをモジって、「ここまでやっちゃ、いけないよ」マンションです。

かつて東宝住宅さんが、ホワイトキャッスル○○マンションで管理組合から提訴された事件がありました。

マンション敷地内に駐車場棟があり、そこをマンション居住者が使用料を支払って利用していました。

ここまでなら当たり前のよく見かけるものですが、このマンションの駐車場使用形態が他と大きく異なるのは、使用料が管理組合に入金されるのでなく、売主である東宝住宅さんへ入金されていることです。

つまりこの駐車場棟は、管理組合の共用部分ではなく売主の所有物とされていたのです。

入居後数年経って、組合員の一人が、「何でマンション区分所有者全員の共有物である敷地に売主の建物が建っているの?どうゆう権利で建っているの?誰が建築を許可したの?」って気が付きました。

建物を建てるには建築地に何らかの法律的権原が必要です。

通常の場合は、建築敷地も自己所有(=所有権)ですが、借りている(=地上権or賃借権)、もしくは親から借りている(=使用貸借)場合もありますが、この4つの権利のどれかを保有していなければなりません。

本件の場合は、売主は駐車場棟を建てるに際しそのいずれも保有していません。

そこで管理組合が売主を相手取って訴訟を提起しました。

これに対し売主は、「敷地内に売主所有の駐車場棟が建っていて、それを区分所有者に貸し出し、使用料は売主に帰属するって重要事項説明書にキチンと記載しているじゃん。皆それを分かって購入しているのでしょう」という例の契約自由の原則を持ち出してきて抗弁しました。

結局、売主は駐車場棟を無償で管理組合に譲渡する、その代わりそれまでの間で得た駐車場使用料収入は管理組合に返金しない、ということで折り合いました。

このような事例があるにかかわらず、最近分譲マンションで敷地内に駐車場棟を建設し、雨が当たらない1階・2階を全て分譲駐車場として売り出し、その管理だけを管理組合に押し付けるという手法のマンションがあります。ちょっと酷すぎです。

東宝住宅さんよりひどいと思われるのは、東宝さんの場合には駐車場棟建設コストは自社で負担し、使用料を徴収するってものでしたが、この売主さんの場合は、駐車場建設コストさえも販売価格に上乗せしているってところです。

販売価格に乗っけてるから、売主に駐車場建設コストはかかりません。

マンション購入者の負担です。つまり、駐車場棟があることで、そのマンション購入者は分譲駐車場を購入するしないに関わらず、駐車場棟建築費分だけ高く購入していることに成ります。

その一方で分譲駐車場として売り出し、その利益は売主さんに入り、利益を上げ、以降の管理は管理組合さんお願ね、というものです。

この販売手法も、例の契約自由の原則から有効というのでしょう。

駐車場使用料が管理組合に入らないと、それだけ修繕積立金の負担が増えるのは自明です。

購入者はこんな簡単なカラクリが分からないのでしょうか?

購入者全員の共有となる敷地に、販売価格に建築費を上乗せして駐車場棟を建設し、それを分譲駐車場として売り出して利益とし、管理だけは管理組合に押し付ける、駐車場使用料がそれだけ管理組合に入ってこないけどそれは修繕積立金を多く負担してやりくりしてね、ってものです

購入者も舐められたものです。