マンション管理士の独り言・・・1422
「城野団地シティガーデン・ボンジョーノ 訴訟」
9月30日に「城野団地シティガーデン・ボンジョーノの住民8世帯9人が売主などを相手取り訴訟を提起した」というニュースが流れました。
この件について、いろんなところから見解を求められます。
記者発表とホームページでの物件概要くらいの少ない情報ですが、それでもつぶやき主のような専門的が見るといろんなことが分かってきます。数回にわたりつぶやきましょう・・・。
このマンションはA棟B棟C棟と3棟60戸で構成されており、駐車場の配置などから敷地は60戸での共有だと考えられ、区分所有法でいう「団地」となります。
そうであれば、各棟ごとに管理組合があり、さらに全体管理組合の計4つの管理組合が存在する組織だと思われます。
訴訟を提起したのは、8世帯9人とあります。ここは要チェックポイントです。
管理組合での提訴でなく、組合員有志での提訴です。1戸はご夫婦での共有かな、です。
この8世帯の方は、全てが同じ棟の方なのでしょうか?仮に全員がA棟の方ならばA棟管理組合のみでの対応となります。8世帯が複数棟に分かれている場合は、それぞれの棟の管理組合での対応となります。
区分所有法ではそのような扱いとなりますが、規約で異なる規定とすることも可能なので、規約を確認しないと何とも言えません。
訴訟を提起したのが管理組合でなく8戸の組合員(=区分所有者)になったのかは、手に取るようにわかります。
棟管理組合でも全体管理組合でも本件については何度も話合われたのでしょうが、以下のご意見が出たことが想像できます。
①提訴となれば費用もかかるし、必ず勝てるのか?負ければ訴訟費用が2次被害となる。②提訴すれば当マンションは欠陥マンションだと世間に思われることにならないか。資産価値の低減につながるのでは?
③そもそも訴訟など争いごとは嫌だ
④ウチは快適で断熱材不足とは考えられない。
⑤売買契約では瑕疵担保責任は引き渡し後2年に限られており、期限が過ぎている。不具合個所は、建物主要構造部に該当しないので品格法の適用もない。勝訴の見込みはあるのか?
⑥不法行為は認められないケースが多い。 などです。
また、訴訟を提起できる立場なのかどうか(=原告適格)についても検討されたことでしょう。訴訟を提起することが出来るのは、“相手方が当然なすべきことをやっていなかったので損害が発生した”或いは“相手方が誤ったことを行ったので、損害が発生した”という損害を被った方が対象となります。
例えばつぶやき主が本件では訴訟に加われません。こんなの、当たり前です。つぶやき主には損害が発生しておらず関係者でも何でもないからです。
では、管理組合として訴訟を提起できるか?換言すれば管理組合に原告適格はあるか?
被告を売主デべさんや施工会社としていますが、設計管理会社も加わっているはずです。
訴訟を提起した方は、当初からお住いの方、つまり「土地付き区分建物売買契約」を売主さんと締結した方だと思われます。途中から中古で購入された方は入っていないハズです。
中古で購入された方は、売主デべさんとは何らの法律関係はありません。中古で買われた方の売主さんは、以前のその住戸の所有者です。
築7年ですから現在の管理組合を構成する組合員には、中古購入者も含まれていることでしょう。
そんな売主デべさんと直接の法律関係のない方が属する団体(管理組合)がデべさんを相手取って訴訟を提起できるのかって問題が生じるのです。
この辺りが分譲マンションの訴訟提起の難しいとことです。
提訴について議案化されそれが否決されたのかも知れませんが、結果として管理組合での提訴は行わないとなったと推察します。
管理組合では提訴しなくても区分所有者としての提訴の権利はありますので、どうしても我慢のならない有志の方が自費で提訴に踏み切ったものでしょう。