マンション管理士の独り言・・・608

「空き家対策」

衆議院選挙前に駆け込みで法案通過したものに、「空き家対策特別措置法」というのがあります。与野党の議員全員が賛成です。素晴らしい。
「空き家」になった家屋に対してその処分をこれまでは各自治体で条例を策定して対応していたものが、この法律が制定されたことにより条例策定なんて煩わしいことを経ずに対応可能となりました。
北九州市にも本年度建築局の中に「空き家対策課」が出来ましたから、さらに活動しやすくなる事でしょう。
しかし、この法律も「空き家」になったものにはそれ相応の効果が期待できるでしょうが、「空き家」そのものを増やさないという根本的な解決には程遠いものです。

空き家になる原因と言うのはほとんどが相続に関連したものです。
相続人は、相続したものの別の地で家を構え生活している、今更実家には帰る予定はない、などで誰も住む人がいなくなり、長年ホッタラカシにされて見事な空き家の誕生です。
一戸建てを相続した場合には、相続人が相続した土地家屋の固定資産税などを負担することになりますが、解体して更地にしたとたんに土地の固定資産税が6倍くらいに跳ね上がるので、そんなら解体せずに建ったままにしておこう、と言うのも遠因のようです。

戸建の場合は、相続人の負担は固定資産税程度で済みますがマンションだとそうもいきません。
マンションの場合には、相続が開始されたら、固定資産税は勿論、更にその上に管理費・修繕積立金を支払わなきゃならない、となります。

「こんな古くてススけたマンションなんて相続でもらっても、貸そうとしても借り手はいないだろうし、売ろうとしても売れないし、しかも、持っているだけで管理費・修繕積立金を負担しなきゃなんないし、さっさと相続放棄しちゃおう」となります。
相続人が相続放棄する割合は、戸建に比べてマンションの方が、けた違いに多いはずです。

モハメド・アブドルならばこういいます。
『今後はもっともっと増えると予言しよう。』

相続放棄されちゃいますと管理組合は大変です。
利害関係人として裁判所に、財産管理人の選任を自腹を切って申し立て、特別縁故者などがいないことが確定したらそれでやっと、その住戸を競売にかけることが出来ますが、競売にかけたって、管理費や修繕積立金の滞納分が膨れに膨れていますから、競落人なんて現れないのが現実です。

戸建の場合は、通常は外壁・屋根・窓・玄関扉などや土地・外構・庭など全てが1人の所有物で当然その管理も所有者が行うことになりますが、マンションの場合には共用部分があり、それらの維持管理は管理組合がおこなわなければなりません。
その原資となるのが管理費や修繕積立金です。それらが長い事入金されないと管理組合活動が行き詰まっちゃいます。

戸建ならば、仮に相続放棄されればその後の処理を行政が行ってくれることになるのでしょうが、マンションの場合には共用部分があるので管理組合が多くの負担を強いられることになります。
1戸でも相続放棄され、「空き家」になったら管理組合は大変です。今後このような事案がいくつも出てくることが予想されます。

戸建の「空き家」対策も大事な事ですが、マンションの「空き家」対策もそれに劣らず重要な事だと思います。

注)モハメド・アブドル
ジョジョ第3弾に出てくるスタンド使い。スタンド名はマジシャンズ・レッド。必殺技は「クロスファイヤーハリケーン」。バニラアイスによって異空間に連れ去られて、死亡。