マンション管理士の独り言・・・749

「理事長の責任」

新理事長さんが5月の総会で産声を上げています。
新理事長さんは、総会で組合員から理事長就任を拍手で承認されたことでしょう。
他の議案は、挙手で賛同を求められますが、役員改選については、拍手で承認とするのがスマートです。

理事長さんは区分所有法では、管理者と呼ばれ、法律的(民法)には組合員とは委任の関係となります。
そして民法では委任に関し、受任者(=管理者=理事長さん)は、「善良なる管理者の注意義務をもって委任事務を処理する義務を負う」とされています。
縮めて善管注意義務です。
善管注意義務というのは、「商売人には商売人として、銀行マンなら銀行マンとして、その業務に関しては一般の人よりワンランク上の注意義務がありますよ」ってことです。

管理を行うについては善管注意義務のほかにもう一つあり、「自己の財産に対するのと同一の注意義務」といわれるものです。
この2つの注意義務の違いは、例えば、隣のワンちゃんを預かった場合、無償で預かっていたとして、犬小屋で自分のワンちゃんと一緒につないでいて、仮に火事があって自分の飼っているワンちゃんもろとも焼け死んだ時には、預かった人に責任は問えない、注意義務違反とはならない、というのが自己のものと同一の注意義務です。

これに対し、預かった人がペット屋さんでしかも有償で預かっていた場合には、上記の例では責任を問えるということになります。
“犬を預かるのが仕事のプロフェショナルで、しかもお金までもらってるっしょ!責任とってよ”ってなります。これが善管注意義務です。

「自己のものと同一の注意義務」より「善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)」の方が責任が重くなります。
理事長さんにはこの善管注意義務が課せられています。
ましてやちょっとでも報酬をもらっていればなお一層の注意義務が求められます。

理事長さんは報酬をもらってなくても、民法上は善管注意義務が課せられていますので、諸問題に対して適切な対応をとらなきゃです。
「順番で役員に就任し、理事間のアミダくじで理事長になったのに、トホホ」なんて泣き言云ってても始まりませんよ。

こんな理事長さんはじめ理事さんを守ってあげるのがマンション管理士の仕事ということもできます。
“よくわかんなかったから、管理士さんに聞いてそのとおりに動いた”って云えば、結果的にそれが誤った対応だったとしても、“理事長はちゃんと責任果たしてるじゃん。そりゃ間違ったアドバイスをした管理士が悪い”となります。
もっとも年がら年中、こんな仕事ばっかりしてるつぶやき主は誤ったアドバイスなんてしませんが・・・。

新理事長さんは、善管注意義務を果たせますか?