マンション管理士の独り言・・・1171
「修繕できないタイル」
マンションは竣工した直後から劣化が始まります。
このため、竣工後おおよそ10年~15年くらいに大規模修繕工事が実施されます。
マンションに足場を掛けてネットで覆い、外壁の塗装やタイル補修、屋上の防水工事やバルコニー内の補修などを行います。
このほかサッシュ回りのシーリング工事や開放廊下の防滑シート張替工事なども実施したいのですが、多くのマンションでは借り入れしてまで補修工事は実施しないので工事個所の優先順位を付けることになります。
この場合、足場を掛けなければ出来ない工事が優先されますが、その中でも剥落すると人や物に損害を与える可能性があるタイルの補修は最優先工事となります。
実際にタイルを叩いてみて、貼り替えるタイルとピンニング工法といってタイルは剥がずに目地部分に樹脂注入する補修方法とに分けます。
タイルを叩いてみれば、“浮き”の状態が分かります。浮いているタイルはタイルとコンクリート躯体との間に空気や雨水が溜まっているので甲高い音が響きます。
しかし最近は補修できないタイルが増えています。
まずは、玄関エントランス回りに、意匠的に貼っている(見栄えを良くするために貼っている)大判40㎝×60㎝のタイルです。
3年ほど前までは、ダンゴ貼り工法と言って、拳を少し小さくしたくらいの大きさの接着剤入りのセメントをタイル裏側に塗り、それをコンクリート躯体に5点で貼り付けていました。
自重があり剥落すると人や物に損傷を与える恐れのある大判タイルですが、特に金物は使用されていませんでした。
名古屋セラミックス製の大判タイルがよく使われますが、施工要領書には、コンクリート面には引っ掛け金物(ガチロック)を取り付けてそれをタイルにフックさせるようにしてください、と記載されていますが、北九州では長いこと5点ダンゴ貼りで施工されていました。
このタイルが剥落し複数のマンションで実際に事故が生じたこともあり、最近では引っ掛け金物を使用するようになりました。
ご安心ください。最近(平成28年以降)竣工のマンションでは、大判タイルは剥落の可能性はほとんどありません。
しかし平成28年までに竣工したエントランス回りなどに大判タイルを貼っているマンションでは引っ掛け金物が使用されていません。剥落の可能性があります。
このタイルの補修工事が厄介です。
目地部分から樹脂を注入しようとしても、ダンゴが大きいのでタイルから躯体までの間が1㎝以上離れています。樹脂がただ漏れ状態でいくら注入しても充填しきれません。
タイルそのものにピンを打ち込む脳天打ちという方法もありますが、タイルの厚みが1㎝程度ですので、打ち込む最中に割れてしまいます。
要するに補修できない、となります。全面貼り換えするしか方法はありません。
このようなマンションが市内100棟以上あります。
キチンとした施工がなされていない“とばっちり”が管理組合さんに重い負担として圧し掛かる一例です。
この事案は、売主さんというより施工建設会社と設計監理事務所の責任かな、って感じです。
何でこんなこと知ってんの?って問われれば、施工建設会社さんから書面での提出を受けたからです。
次回も「修繕できないタイル」です。